2017 年 31 巻 3 号 p. 249-254
症例は25歳,女性。16歳時から右環指爪に茶色の色調変化があった。19歳で初診,色素線条は右環指中央から小指寄りに幅5 mmで,爪表面は平滑で変形もなし。明らかな染み出しはないが,micro-Hutchinson signあり。爪部母斑と考えられたが,ごく初期のmalignant melanoma(MM)in situの可能性も否定できず,定期観察を開始。1年後,線条の一部分が濃くなり,幅6 mmと太くなったが,その後1年の経過で薄くなった。3年半の経過中,常に爪の表面は平滑。一時通院を自己中断していたが,出産後から線条が濃くなり,先端に亀裂を生じたため再受診。経過,ダーモスコピー所見から,MM in situと臨床診断し,切除術を施行。病理組織学的にもMM in situであった。経過を通じ,爪部の色調の変化を観察できたMM in situの1例をダーモスコピー所見とともに文献的考察を加え報告する。