2018 年 32 巻 3 号 p. 279-284
神経線維腫症1型(neurofibromatosis,以下NF1)患者においては健常人と比して様々な悪性腫瘍発生率が高いとされている。今回我々はNF1患者に発症した悪性黒色腫(malignant melanoma,以下MM)の1例を経験した。
72歳,男性。NF1患者。初診の2ヵ月前,右鼠径部皮下結節が出現し,近医にて切除,S100蛋白陽性異型紡錘形細胞増殖より,悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor,以下MPNST)と病理診断された。PET-CTで鼠径リンパ節転移があり,追加治療目的に当院を紹介受診した。術前の全身診察で,体幹・四肢の神経線維腫とカフェオレ斑の多発に加え,右母趾爪の脱落,潰瘍があり,周囲に不整な黒色斑と脱色素斑を伴っていた。リンパ節郭清時に生検し,右母趾原発MM,右鼠径骨盤内リンパ節転移と診断した。