2018 年 32 巻 3 号 p. 290-294
77歳,女性。初診の1年前,左肩に紅色腫瘤を自覚し,その後緩徐な増大傾向があった。前医切除時の検体にて,明瞭な核小体を持ち,核分裂像も散見される類円形および紡錘形の大小不同な核を有する細胞が境界明瞭な胞巣を形成し,免疫染色ではHMB-45一部陽性,Melan-A陰性,S100陽性を示した。腫瘍細胞は真皮にのみみられ,他部位に明らかな原発巣はなかったため,primary dermal melanomaと診断した。拡大切除,センチネルリンパ節生検を行い,センチネルリンパ節に転移はなく,術後1年再発,転移なく経過している。Primary dermal melanomaは予後がよいことで知られるが,通常の悪性黒色腫と同様の経過をたどりうること,また転移性黒色腫と完全に見分けることは難しいことから,慎重に経過を追う必要がある。