2018 年 33 巻 1 号 p. 66-70
熱傷瘢痕や慢性潰瘍などが皮膚悪性腫瘍の発生母地となることは有名であるが,実際の診療現場で出会うことは比較的稀である。瘢痕癌は一般に予後不良と考えられており,非典型的な経過をたどる瘢痕や慢性潰瘍に対しては漫然とした保存的加療を避け,悪性化の早期発見に努める必要がある。瘢痕癌における有棘細胞癌の特徴の一つとして高分化型が多いことがあげられる。当センターでは熱傷瘢痕に生じた有棘細胞癌を2例経験し,そのうち1例は生検において肥厚性瘢痕と診断された。組織量の少ない検体からは正しい病理診断が得られないことがあり,病理組織所見のみならず臨床所見や経過,画像評価などを考慮した包括的判断が求められる。