2019 年 34 巻 2 号 p. 155-159
71歳,男性。右下腿の長径13 cmの巨大腫瘤を主訴に受診。単純CTで右鼠径部,外腸骨領域に複数の腫大したリンパ節がみられ,生検の結果,有棘細胞癌(SCC)T3N2M0 Stage IVと診断。原発腫瘍が大きく,リンパ節転移を伴う高リスク症例であることから,外科的切除の適応と考え,切断を勧めたが,患者の下腿温存の希望が強く,シスプラチン+アドリアマイシンの併用(CA)療法と原発腫瘍への放射線照射(KORTUC治療)を行った。また悪臭と浸出液のコントロールを目的にMohsペースト外用療法を併用した。腫瘤は徐々に平坦化し,増加していた血中SCC抗原値も低下した。CA療法3クール施行後,右鼠径部と外腸骨領域のリンパ節郭清術を行い,原発腫瘍より再度生検を行った。リンパ節,原発腫瘍ともに腫瘍細胞はみられなかった。外科的切除術が難しいSCC症例では,CA療法と放射線療法の併用は有効な治療法となり得ると考えられた。