2021 年 36 巻 1 号 p. 33-37
76歳,女性。25歳時に帝王切開術施行後,出血のため再開腹術を受けた。手術瘢痕の一部に繰り返す滲出液があり,その後色素斑が出現したが放置していた。初診時,上腹部の手術瘢痕上に瘻孔を認め,瘻孔の下方に隣接して一部黒色斑,結節を伴う紅斑局面を認めた。皮膚生検の病理所見から基底細胞癌と診断した。MRIでは瘻孔下端が白線直下まで達していた。全身麻酔下に腹膜脂肪組織を含めて腫瘍を切除した。切除断端は陰性で術後1年半再発なく経過している。切除標本の組織を詳細に観察すると,腫瘍胞巣の一部が瘻孔壁と連続しており瘻孔から発生した基底細胞癌と診断した。術後の瘢痕から生じた基底細胞癌と,瘻孔を伴う,または瘻孔から生じた基底細胞癌の症例は,いずれも少数の報告がある。術後の瘢痕部に瘻孔が生じそこから基底細胞癌が生じた例はこれまで報告がなく,稀少な症例であると考え若干の文献的考察を交えて報告する。