2023 年 38 巻 1 号 p. 7-11
72歳,男性。約7ヵ月前から背部の自覚症状のない腫瘤が急激に増大した。左上背部に直径20 cmの紅色の腫瘤があり,長楕円形で表面は湿潤し凹凸あり,弾性軟で下床と可動性は良好であった。近傍に鶏卵大の皮下腫瘤と両腋窩リンパ節腫脹を認めた。生検組織はsquamoidな異型角化細胞が不規則な索状の胞巣を形成していた。SCC 49.8 ng/mLと上昇し,APTT 45秒,D-dimer 9.1μg/mL,P-FDP 7.6μg/mLと凝固異常あり,CTで縦隔リンパ節腫大と肝転移が多発していた。入院翌日に見当識障害と構音障害を認め,MRIで新旧の多発脳梗塞像があり,ダルテパリンナトリウム投与で麻痺なく回復した。姑息的に背部の2個の腫瘤と両腋窩のリンパ節を摘出した。全摘標本は生検組織と同様であったが,臨床的に褐色調の部分に基底細胞癌の併発を認めたが全体の5%以下であった。術後C’A’療法を施行し,経過中に消化管出血で永眠した。皮膚癌でも凝固異常があれば稀ではあるがTrousseau症候群を疑い,血栓症に十分に注意する必要がある。