Skin Cancer
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38 巻, 1 号
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第38回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 福井 伶奈, 山田 朋子, 倉田 まりな, 山本 直人, 田中 亨, 大城 久, 梅本 尚可
    2023 年 38 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    83歳,男性。右下腿前面に11×13 cm,高さ1 cm程度の表面びらんを伴う多結節性腫瘤あり,病理所見より高分化型有棘細胞癌と診断した。PET-CTにて患側膝窩・鼠径・骨盤内リンパ節に集積と腫脹を認めたが,他部位のリンパ節,他臓器に所見はなかった。原発巣は水平2 cmマージン,骨膜上で切除,病理学的に断端陰性で腫瘍間質にIgG4陽性形質細胞が多数浸潤していた。膝窩・鼠径リンパ節もIgG4陽性形質細胞が浸潤し,転移像はなかった。血清IgG4は250 mg/dLと高値だが他臓器病変はなく,IgG4関連疾患の診断には至らなかった。術後1年で有棘細胞癌の再発や転移所見はない。血清IgG4値はほぼ横ばい,リンパ節の有意な縮小なく,新たなリンパ節腫脹があることから,IgG4関連疾患の潜在を懸念している。悪性腫瘍とその間質や所属リンパ節に浸潤するIgG4陽性形質細胞との関連について考察する。

  • 櫻井 恵海, 田中 隆光, 江川 昌太, 深谷 早希, 林 耕太郎, 石川 武子, 鎌田 昌洋, 斉藤 光次, 笹島 ゆう子, 多田 弥生
    2023 年 38 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    72歳,男性。約7ヵ月前から背部の自覚症状のない腫瘤が急激に増大した。左上背部に直径20 cmの紅色の腫瘤があり,長楕円形で表面は湿潤し凹凸あり,弾性軟で下床と可動性は良好であった。近傍に鶏卵大の皮下腫瘤と両腋窩リンパ節腫脹を認めた。生検組織はsquamoidな異型角化細胞が不規則な索状の胞巣を形成していた。SCC 49.8 ng/mLと上昇し,APTT 45秒,D-dimer 9.1μg/mL,P-FDP 7.6μg/mLと凝固異常あり,CTで縦隔リンパ節腫大と肝転移が多発していた。入院翌日に見当識障害と構音障害を認め,MRIで新旧の多発脳梗塞像があり,ダルテパリンナトリウム投与で麻痺なく回復した。姑息的に背部の2個の腫瘤と両腋窩のリンパ節を摘出した。全摘標本は生検組織と同様であったが,臨床的に褐色調の部分に基底細胞癌の併発を認めたが全体の5%以下であった。術後C’A’療法を施行し,経過中に消化管出血で永眠した。皮膚癌でも凝固異常があれば稀ではあるがTrousseau症候群を疑い,血栓症に十分に注意する必要がある。

  • 野田 佑奈, 山本 有紀, 下松 達哉, 岩橋 吉史, 村田 晋一, 神人 正寿
    2023 年 38 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    87歳,女性。約40年前に右中指から特に誘因なく出血があり電気焼灼術を受けた。初診から38年後,同指の先端に角化を自覚。近医で2,3回shaveされたが再燃したために,前医受診し摘出術を施行された。病理結果はeccrine汗腺への分化傾向を有するtubular adenomaであった。切除から約1年後,同部位に腫瘤を形成してきたためMRIを撮影したところ末節骨の融解を認め,悪性腫瘍を疑われ当科紹介となった。再生検では2層性を有し,内腔側は腺上皮様細胞でEMAが陽性,外側の筋上皮様細胞はα-SMAが陽性であった。またMIB-1陽性率は40~50%,p53強陽性像が領域性にみられた。Digital papillary adenocarcinoma(DPA)と診断し,PIP関節で切断した。DPAは局所再発率が高く,また遠隔転移による死亡例も報告されているが,現在転移に対する有効な治療法はない。

  • 芳賀 貴裕
    2023 年 38 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    宮城県気仙沼市は,1980年をピークとして人口が減少傾向にあり,2021年には6万人を切っている。そういう状況の中,2017年1月から2021年12月までの5年間に,当科で初期治療から介入した悪性黒色腫の症例は28例であった。男性6例,女性22例で,それぞれの年齢のピークは50歳代と80歳代にあった。病期は0期が14例(50%),I期が4例(14.3%),II期が6例(21.4%),III期が4例(14.3%)であり,IV期の症例はいなかった。II期では,IIC期が5例で最多であった。部位では,顔面が5例,下肢は4例,足・足趾は10例,足爪は0例,上肢は0例,手・手指は1例,手爪は1例,外陰部は2例,体幹5例であった。原発部位,TNM分類,病期に関するデータをまとめ,当科での症例の傾向と全国的な報告を比較し,検討した。

第37回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 井上 真梨子, 石井 暢明, 芹澤 直隆, 土屋 未央, 秋元 正宇
    2023 年 38 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    63歳,男性。左前腕に常色の皮膚腫瘍を自覚し,徐々に黒色に変化してきた。自覚から7ヵ月後に当科受診となった。左前腕に散在性の黒色斑を伴う,軽度隆起した25×20 mm大の紅色病変を認めた。初回手術時は2mmマージンで切除し,毛母腫の病理診断となった。初回手術から1年5ヵ月後,同部位に13×8mmの黒色隆起斑を生じたため当科再診となった。1mmマージンで切除したところ病理組織検査で悪性毛母腫の診断となった。20mmマージンで筋体の一部を含め追加切除し,人工真皮を貼付した。断端陰性を確認後,全層植皮による再建を施行した。最終手術から3年経過しているが,再発は認めていない。

第36回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 福井 伶奈, 梅本 尚可, 大瀧 薫, 野口 友里, 松本 崇直, 高澤 摩耶, 堤内 路子, 鈴木 浩一, 田中 亨, 出光 俊郎
    2023 年 38 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル 認証あり

    55歳,男性。関節リウマチ,間質性肺炎を合併。当科初診1年前より咳嗽,1ヵ月前より血痰が出現。左肺門部に異常陰影あり,肺癌の皮膚転移疑いで当科受診。上腹部と左前腕に示指頭大までの弾性硬の皮下結節を計4ヵ所触知。PET-CTで左肺門部,肝臓,骨,縦隔や大動脈周囲リンパ節,皮下結節に集積。皮下結節と経気管支肺生検の病理所見より原発不明メルケル細胞癌の多発転移と診断。アベルマブ10 mg/kg 4回投与後には全ての病巣が消失するも,irAEとしてGrade3の重症筋無力症を発症,アベルマブ中止してステロイド投与,血漿交換するも改善乏しく,再投与不可。アベルマブ中止4ヵ月で腫瘍が再発,急速に全身に拡大し化学療法を施行するも病勢コントロール不良で治療を断念。アベルマブによる重症筋無力症の発症例は少ないが,重症筋無力症は死亡率の高いirAEであり,そのマネジメントは患者の予後に直結。初期兆候を見逃さず,症状出現時に速やか,かつ十分な治療介入が必須。

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