2024 年 39 巻 2 号 p. 174-179
70歳,男性。当科初診2年前に,左上腕に紅色結節を生じ,生検でMerkel cell carcinoma(MCC)(Merkel cell polyomavirus陽性)と診断した。生検後3週で自然消退した。拡大切除とセンチネルリンパ節生検を施行し腫瘍細胞の残存はなかった。CTで遠隔転移はなく,病期はT2N0M0 stage ⅡA(AJCC8版)であった。関節リウマチに対しPSL 10 mg内服中で免疫抑制のリスク因子があったため術後補助放射線療法を勧めたが拒否された。術後1年7ヵ月で小腸転移,腹膜播種を来し,アベルマブを2コース投与後するも改善なく永眠された。MCCは高頻度に再発転移を来す悪性疾患だが稀に自然消退する。原発巣の自然消退例の予後は一般に良好とされるものの,自験例は原発巣が自然消退した後に急速に他臓器転移が進行した。自然消退後に術後放射線療法を行った症例でも再発転移を来した報告もあり,MCCの自然消退後の管理については,逐次治療の有無に関わらず慎重な経過観察が重要と思われる。