2006 年 21 巻 3 号 p. 318-322
90歳男性。頭部全体に広範囲に紫斑および紅斑を認めた。紅斑は前額部にも及び, 頭頂部の一部には軽度浸潤, 隆起性病変も存在した。血液検査所見, 頭部MRI, 胸腹部CTで異常所見は認められなかった。紅斑部の病理組織像では真皮の上~中層にかけて不規則な管腔形成が認められ, 一方, 頭頂部の隆起性病変部では真皮内に腫瘍細胞が充実性に増殖していた。これらの細胞は強拡大像で大型円形の核を有する類上皮様細胞で, 胞巣状に増殖し一部に裂隙を形成し赤血球を入れていた。腫瘍細胞の核の異型性やクロマチンの濃染はやや乏しく, 核分裂像も少なかった。免疫組織化学では腫瘍細胞に一致してFacter VIII, CD31が陽性, CD34は陰性であった。血管肉腫,Stage Icと診断し, 病変部に対しIL-2の局注開始したが, 数日で好酸球の上昇と腎機能障害が著しくなったため中止し, 以後広範囲電子線照射の治療に切り替えたところ, 皮疹は著しく改善・消失した。