72歳男性。2003年1月初診。1998年より陰嚢部に湿疹様局面を自覚。市販の抗真菌薬を外用するも難治であり, 近医皮膚科受診。生検で乳房外Paget病の診断を受け, 加療目的に当科紹介受診となった。初診時, 陰嚢, 陰茎, 両鼠径部から臍下部まで至る広範囲の境界明瞭な紅色局面を認めた。表面は全体に糜爛化し, 大量の滲出液を伴い, 一部結節状に隆起する箇所もあった。全身造影CTの結果, 両鼠径部リンパ節転移と傍腹部大動脈リンパ節への転移を疑わせる所見を認めた。2003年1月23日, 本人, 家族の希望にて腫瘍を一期的に切除, 大腿部からの網状分層植皮術を行った。退院後は定期的な経過観察を行っていたが, 2005年9月16日, CEA167.4ng/ml (正常6ng/m1以下) と腫瘍マーカーの著明な上昇を認め, 9月26日永眠された。文献的にみても進展が広範囲に及ぶ乳房外Paget病であった。