Skin Cancer
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病理医の立場から: Paget病の診断と浸潤の判断の仕方
泉 美貴
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2008 年 23 巻 3 号 p. 320-331

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抄録

病理医の立場から乳房外Paget病について述べる。乳房外Paget病の本質は腺癌であり, 組織学的に腺系細胞への分化は, 1) 腺管の形成と, 2) 細胞質内の粘液の産生によって表される。腺腔内に粘液を分泌するために核が基底膜側に偏在し, 細胞質は淡明ないしやや紫色を示す。さらに, 3) クロマチンの濃縮や, 4) 核小体が明瞭であることなどが腺上皮系細胞の特徴と言える。Paget細胞は, 細胞質内にメラニンを有することが稀ならずあり, 悪性黒色腫と誤認しないことが重要である。
Paget細胞を検出するためには特殊染色よりも, 免疫組織化学的に低分子ケラチン (CAM5.2) やCEAが有用である。
浸潤の判断については, 単なる標本の斜め切れや, 毛嚢や汗管に沿う (in situの) 進展を誤認してはならない。真皮内の高度な炎症反応は, むしろ非浸潤性病変であることが多い。Paget細胞は浸潤すると乳癌に酷似する形態を示し, リンパ管侵襲を来して予後が著しく低下する。
細胞の起源については諸説あるが, 本稿ではTbker cellについて概説する。

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© 日本皮膚悪性腫瘍学会
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