抄録
60歳代,女性。20年来尋常性乾癬に罹患しているが最近は市販の外用剤を塗布する程度であり通院加療をしていなかった。感冒を契機に10日前から全身の潮紅と浮腫,落屑が急激に悪化し,皮膚の疼痛を伴う紅皮症にいたった。疼痛のために運動が制限され,食事摂取が困難となったため当院に緊急入院した。入院時の PASI スコアは58.8であり CRP は 7.5mg/dl と上昇していた。重症細菌感染症と結核感染を否定した上でインフリキシマブ投与を行ったところ,1週間後には紅斑や落屑,皮膚の疼痛は著明に改善し,食事の摂取が可能となった。米国の乾癬性紅皮症の治療ガイドラインでは乾癬性紅皮症の第1選択薬はインフリキシマブとシクロスポリンであるが,自験例は高血圧症を有していたためにシクロスポリンを選択せずにインフリキシマブを投与した。自験例のような急速な悪化を伴う乾癬性紅皮症は治療の緊急性が高く,インフリキシマブは良い適応になると考えた。(皮膚の科学,10: 209-213, 2011)