皮膚の科学
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症例
大学女子柔道部におけるブラシ法とセロファンテープ法を用いて検診した Trichophyton tonsurans 感染症の集団発生例
坂元 とも子安澤 数史藤井 俊樹田邉 洋望月 隆豊本 貴嗣
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2012 年 11 巻 4 号 p. 313-318

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抄録

2009年某大学女子柔道部(部員数19名)で Trichophyton (T.) tonsurans 感染症の集団発生があり,2010年4月より2011年6月までに6回の検診を施行した。ヘアブラシを用いて培養を行うブラシ法に加えて,体幹の皮疹に対してセロファンテープによる培養(以下テープ法)をおこなうことで,従来の検診では検出できなかった体部白癬の患者を抽出できたと考えられた。1回目の検診では19名中6名が培養陽性で,その内訳はブラシ法による頭部からの陽性者3名,テープ法による体部の陽性者4名,このうち1名は頭部,体部ともに T. tonsurans が陽性であった。分離株の遺伝子型はリボソーム RNA 遺伝子の NTS 領域の制限酵素分析法でいずれも NTS I型であった。陽性者6名全員を塩酸テルビナフィンの内服で治療した。2010年5月に行った3回目の検診で感染の終息を確認した。2011年4月新入生を迎えた後の5回目の検診時に14名中6名が培養で陽性であったが,再度の治療により感染は終息しつつある。なお,女子柔道部員では毛髪を束ねて結い上げる際に毛包一致性の丘疹や不完全脱毛斑を生じる場合があり,これが black dot ringworm に類似した所見を呈することから,鑑別に注意が必要と思われた。(皮膚の科学,11: 313-318, 2012)

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© 2012 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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