皮膚の科学
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症例
腱鞘巨細胞腫 (Giant cell tumor of tendon sheath) の1例
越田 冴野櫟原 維華黒川 晃夫上田 英一郎森脇 真一
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ジャーナル 認証あり

2012 年 11 巻 4 号 p. 308-312

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抄録

53歳,女性。2年前から左第1指に腫瘤があった。初診1ヶ月前の他院にて施行されたエコー検査では境界明瞭な低エコー塊であることから充実性腫瘍と判断され,精査と加療を目的に当院へ紹介された。初診時,左第1指 IP 関節背側に径 16×16mm 大の弾性硬で下床との癒着のある表面平滑なやや黄褐色の皮下腫瘤が存在した。MRI では左第1指 IP 関節背側に T1 強調像で低信号,T2 強調像で高信号を伴う低信号,T1,T2 強調像で骨皮質は腫瘍部位で境界不明瞭の信号変化を認め,造影 T1 強調像にて明瞭になる病巣がみられた。皮膚生検を施行したところ,真皮深層から皮下組織に組織球様細胞や類上皮細胞,破骨細胞型多核巨細胞,泡沫細胞および線維芽細胞からなる集塊がみられた。浸潤する細胞の大部分は CD68 陽性であった。以上より本症例を腱鞘巨細胞腫 (giant cell tumor of tendon sheath) と診断した。皮膚科領域での本邦報告例は文献的には2000年以降26例(自験例含む)であり,発症部位は手指が15例と最多であった。(皮膚の科学,11: 308-312, 2012)

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© 2012 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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