抄録
アトピー性皮膚炎のかゆみの特徴のひとつに,かゆみ過敏が挙げられる。この過敏状態での神経閾値の低下は,“感作”と呼ばれている。アトピー性皮膚炎の感作には,末梢性と中枢性が存在する。近年,脳機能画像の進歩により,脳内の生理活動を観察することが可能となった。これらの結果から,健常人でのかゆみ刺激によって活動する脳部位は,一次体性感覚野,運動野,運動前野,視床,前頭前野,島,帯状回などである。さらに,アトピー性皮膚炎では,より広い範囲の脳部位に強い活動がみられることが証明されている。このアトピー性皮膚炎における広範囲の脳活動は,強いかゆみの程度や中枢性感作の状態を反映していると考えられる。(皮膚の科学,増18: 17-19, 2012)