皮膚の科学
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11 巻, Suppl.18 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 天谷 雅行
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 1
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
  • 片岡 葉子
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 2-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は,症状がコントロール維持されると自然寛解が期待される疾患である。したがって,症状はない,あっても軽微で,薬物療法もあまり必要としない状態を維持することが治療のゴールである。ゴールのためには適切な炎症制御が重要であり,その中心的役割はステロイド外用薬にある。2008 年以降,血清TARC をバイオマーカーとしてアトピー性皮膚炎の病勢を高感度で把握できるようになり,難治例のステロイド外用の方法を見直してみると,治療不足で遷延化,重症化している患者が相当存在していることが明らかとなってきた。医師個人の裁量に任されていた外用方法を改めて見直す必要がでてきたのである。ステロイド外用療法の戦略は“loose care”ではなく,“tight control”であるべきことを,proactive 療法の有効性,血清TARC 値の変動と治療効果,乳児重症患者におけるIgE 上昇率の差異等から論じた。さらに,“tight control”成功の外用戦略を提案し,通常行われている外用方法の問題を,何を,どれだけ,どこに,いつまで外用するかに分類して再考した。(皮膚の科学,増18: 2-8, 2012)
  • 佐伯 秀久
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 9-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の治療に用いられるカルシニューリン阻害薬としてはタクロリムス軟膏とシクロスポリンがある。タクロリムス軟膏の使用法に関しては,寛解導入療法のみならず,寛解維持療法としての使い方が欧米のガイドラインで提唱されており,寛解導入後,週に2 ~ 3 回のタクロリムス軟膏外用を続けることで,症状の再燃を有意に抑えることができる。シクロスポリンは2008 年にアトピー性皮膚炎の適応を取得した。本薬剤の適応患者は,既存治療で十分な効果が得られない16 歳以上の最重症患者である。投与期間はできる限り短期間にとどめ,1 回の治療期間は12 週以内を目安とする。再投与する場合,2 週間以上の休薬期間を設ける。(皮膚の科学,増18: 9-12, 2012)
  • 加茂 敦子, 冨永 光俊, 高森 建二
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 13-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)は,痒みの難治化により皮疹が増悪する。増悪した皮疹はしばしば赤みを伴い,患者のQOL(quality of life)を障害する。AD 患者に光線療法を行うと,最初に痒みが軽減し,その後皮膚炎の改善を認める。これまで我々は,光線療法がAD 患者で増加した表皮内神経を退縮させること,表皮オピオイド系の発現バランスの破綻を正常化することで痒みを抑制することを明らかにした。AD の赤みに対する光線療法の効果について不明点は多いが,先行研究から光線療法が神経線維,T 細胞等の炎症性細胞に影響を与え,血管新生や血管拡張を誘導する因子を抑えることで赤みを軽減することが示唆される。(皮膚の科学,増18: 13-16, 2012)
  • 石氏 陽三
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 17-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎のかゆみの特徴のひとつに,かゆみ過敏が挙げられる。この過敏状態での神経閾値の低下は,“感作”と呼ばれている。アトピー性皮膚炎の感作には,末梢性と中枢性が存在する。近年,脳機能画像の進歩により,脳内の生理活動を観察することが可能となった。これらの結果から,健常人でのかゆみ刺激によって活動する脳部位は,一次体性感覚野,運動野,運動前野,視床,前頭前野,島,帯状回などである。さらに,アトピー性皮膚炎では,より広い範囲の脳部位に強い活動がみられることが証明されている。このアトピー性皮膚炎における広範囲の脳活動は,強いかゆみの程度や中枢性感作の状態を反映していると考えられる。(皮膚の科学,増18: 17-19, 2012)
  • 豊田 雅彦
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 20
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
  • 小林 茂俊
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 21-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)の最大の特徴はしつこいかゆみであり,睡眠時掻破によりAD 患者の睡眠の質は低下していると考えられる。特に小児では,良好な睡眠は,健全な成長・発達のみならず,患者QOL 向上のために不可欠である。睡眠の質・掻破を客観的に評価することは,今後ますます重要性を増すものと考えられる。我々はアクティグラフィーを利用して,小児AD 患者の睡眠・掻破行動を解析している。それにより,小児AD 患者では重症度に応じて睡眠の質が低下していること,掻破行動が増加していることが示された。アクティグラフィーは,小児AD 患者の睡眠の質・夜間掻破の客観的な分析法として今後の応用が期待される。(皮膚の科学,増18: 21-25, 2012)
  • 塩路 理恵子
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 26-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    森田療法の基本的な概念を紹介し,皮膚科入院治療後に入院森田療法を行った症例の検討を通して,アトピー性皮膚炎の治療における森田療法の応用について考察した。入院森田療法では,皮膚科治療を継続しながら,作業を中心とした健康的な生活を送っていく。症例の治療では,皮膚症状のつらさを充分に傾聴した上で,不安を自然なものとして扱い,不安とつきあいながら行動に踏み込むことを支えていった。生活に注目すること自体が身体状況へのとらわれから焦点を外し,自然な心身のあり方を取り戻していくことでもあり,「あるがまま」の自己と付き合うことにつながる。そうした森田療法の経験は,アトピー性皮膚炎の寛解維持につながる可能性があると考えられる。(皮膚の科学,増18: 26-30, 2012)
  • 細谷 律子
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 31-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    皮膚症状も含めた種々のストレスは,かゆみで身体化され,掻く,叩く,擦るなどの行動で発散される。ストレス対処行動ともいえるこれらの行動は毎日行われているうちに習慣化し,itch-scratch-cycle を巻き込んで難治・重症化していく。難治化した患者の多くは,掻破行動,かゆみ感覚,アトピー性皮膚炎にとらわれており,中には掻破行動依存症ともいえる状態に発展する患者もいる。
    心理面に介入していくためには,まず,薬剤で皮膚炎を落ち着かせ,悪化因子の検索とその除去を心がける。皮膚症状という身体的苦痛をできるだけとっておくことが必要である。そして掻破行動の習慣化に対する予防および治療を試みる。掻破行動に対し心理的依存が強い場合,「掻くな」と指導するより,生き方や考え方の転換をめざし心理的指導を行う。
    重症・難治化を防ぐために皮膚のバリア機能を保たせることが必要であり,発症初期からのスキンケアの大切さが叫ばれている。筆者は,同時に心のバリア機能も成長させるべく,母親にアドバイスしていくことも大切であろうと考えている。(皮膚の科学,増18: 31-35, 2012)
  • 上田 英一郎
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 36-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎がストレスにより増悪する事はよく知られている。また,ストレスマネジメントの重要性も一般的に認識されるようになり,「癒し」などと呼ばれ取り入れられるようになってきた。しかし,ストレスの原因がトラウマ記憶と関係している場合,通常のストレス対処法では効果が出にくいことや,確立されたトラウマケアの技法があることはあまり知られていない。そこで,トラウマとトラウマによって引き起こされる心や体の反応について解説し,アトピー性皮膚炎治療への応用について述べる。(皮膚の科学,増18: 36-38, 2012)
  • ―体験型ストレスマネジメント―
    中島 園美, 西野 洋, 岸田 寛子, 前田 七瀬, 吉岡 詠理子, 片岡 葉子
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 39-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    重症成人アトピー性皮膚炎(以下,AD) 患者を対象にした教育入院プログラムにおける心理的アプローチとして, ストレスマネジメントを実施している。ストレスに対しての気づきや心身相関への理解が希薄であるAD 患者も少なくなく, そのような場合, 有効なストレス対処がなされず症状増悪への影響は大きい。患者自身によるストレスや心身相関の気づきには,「教育的理解」よりも「体験的理解」が有効であることから, 心理テストによるストレスの客観化や「質問・引き出し型」のコミュニケーション, リラクセーション体験などによってストレスに関する洞察を促す「体験型ストレスマネジメント」が効果的だと考えている。(皮膚の科学,増18: 39-42, 2012)
  • ―アンケート調査による皮膚および精神症状の改善度の検討―
    向井 秀樹, 福田 英嗣, 鈴木 琢, 早乙女 敦子, 早出 恵里
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 43-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎における入院療法の有用性を検討するために,当科に入院歴のある20 歳以上66 例のアンケート調査結果を解析。入院前の症状として,痒みが強いが最も多く,次いで仕事や勉強に支障といったパフォーマンスの低下,寝つきが悪いなどの睡眠障害や外出がしにくい外見上の問題などがあった。入院時の皮膚および精神症状は,退院時其々92%と79%と高率に改善した。さらに,退院後の治療に関するコンプライアンスやアドヒアランスの向上にも繋がった。退院後,現在の皮膚症状は76%が改善を維持していた。
    QOL が大幅に改善する短期集中型の入院療法は,重症例の治療法として有用性が高いことが今回のアンケート調査で評価された。(皮膚の科学,増18: 43-47, 2012)
  • ~アトピー性皮膚炎のナラティブアプローチ~
    清水 良輔
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 48-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の40 歳,女性症例にナラティブセラピーを用いてその心理社会的な側面に主に電話とFAX で介入し良好な結果を得たので報告する。アトピー性皮膚炎にまつわる様々な不安を「ムンクの叫び」として外在化し,影響相対化質問を用いて明らかになったアトピー性皮膚炎にまつわるドミナント・ストーリーとそれに対抗する患者のリソースを「ゴッホのひまわり」として再著述してもらった。心理的には著効したがさらに皮膚症状の安定のためにはリ・メンバリングや定義的祝祭などの技法を用いて問題のないオルタナティブ・ストーリーをもっと分厚く書き換えていくことが必要と考えられた。(皮膚の科学,増18: 48-52, 2012)
  • ―心身医学的アプローチにより治療効果が上昇した1 例―
    梅本 尚可, 飯田 絵理, 塚原 理恵子, 中村 考伸, 太田 学, 正木 真澄, 加倉井 真樹, 山田 朋子, 出光 俊郎
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 53-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    32 歳,男性。難治性成人アトピー性皮膚炎(AD)で当科を受診し,外来でシクロスポリン内服治療を行ったがコントロール不良だった。患者は内向的で訴えが少なく,医療者は彼の生活環境を認識していなかった。初診から1年半後,父親が患者がひきこもりであることを我々に伝えた。入院でステロイドの短期内服治療を行い,症状は速やかに改善,退院後1 年以上,ステロイドとタクロリムスの外用治療で安定した状態を保っている。患者の訴えにゆっくり耳を傾け,彼の社会心理的ストレスを理解し,信頼を得たことで,薬剤のコンプライアンス,治療効果が格段によくなった。AD 患者の診療では,皮膚だけでなく人間を診ることの重要性を再認識した。(皮膚の科学,増18: 53-56, 2012)
  • 吉岡 詠理子, 前田 七瀬, 岸田 寛子, 西野 洋, 片岡 葉子
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 57-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)の乳児を持つ保護者は病気や治療に対する不安が強いため,当院では2009 年より保護者を対象とした集団指導である『乳幼児アトピー教室』を実施している。この集団指導は「原因・経過の見通し」「ステロイド治療の意味とその方法」「スキンケアと日常生活の注意」「食物アレルギーと離乳食の進め方」について全4 回で完結するものである。全4 回の集団指導の前後でQPCAD を用い保護者のQOL の評価を行ない,介入効果を末梢血好酸球数と血清TARC 値を用い追跡した。この集団教育により保護者のQOL は有意に改善し,臨床所見も顕著な改善を認めた。保護者の心配や不安の軽減により,より良い治療効果へつながることが確認された。(皮膚の科学,増18: 57-60, 2012)
  • ―トリコチロマニアから掻破性脱毛への移行―
    東 直行
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 61-64
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    9 歳,男児。軽度のアトピー性皮膚炎で近医加療中,初診の1 ヵ月前より左側頭部に脱毛斑を生じたため当科へ紹介となった。帯状の脱毛斑は,痒みがなく,短く残存する断裂毛があり,無意識に抜毛していることからトリコチロマニアと診断した。詳細な問診より,学童保育のサッカー練習で,ゴールキーパーを強制されているというストレスが判明した。保護者が学童保育に相談し,3 ヵ月後に略治。その後,発汗でアトピー性皮膚炎が悪化,前頭・両側頭部の痒みから,掻破性脱毛を生じた。ステロイド外用で加療したが難治であったため診察毎に両側頭部の脱毛斑の写真記録を実施,毎回患児に見せて,患部を客観視させたところ,約8 ヶ月で治癒した。(皮膚の科学,増18: 61-64, 2012)
  • 長尾 みづほ, 町野 友美, 杉本 真弓, 細木 興亜, 藤澤 隆夫
    2012 年 11 巻 Suppl.18 号 p. 65-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/28
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は慢性に経過する皮疹と強い痒み,痒みによる不眠や精神的不穏,皮疹による外見の問題,外用治療の煩雑さなど,生活全般にわたって,疾病負担は少なくない。乳幼児では電解質異常や体重増加不良を引き起こし,成長発達にも大きく関わることもある。特に小児では本人のみならず保護者への負担も大きい。そのため,治療にあたっては単に皮疹だけでなく,痒みやその負担感を客観的に評価することが重要である。レボセチリジンを痒みの残るアトピー性皮膚炎児に投与して日本版小児皮膚QOL で評価したところ,QOL の改善を認めた。小児においてもQOL を考慮した治療が望ましいと考えられる。(皮膚の科学,増18: 65-69, 2012)
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