抄録
47歳,女性。ウガンダに渡航して7日目に右前腕屈側にそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。帰国後,紅色丘疹が増加したため渡航20日目に近医皮膚科を受診した。副腎皮質ステロイド含有軟膏の外用を開始したが,右肩と腰部の紅色結節が増大し疼痛を伴うようになったため,渡航24日目に当院を受診した。数日後紅色結節の中心に虫体を認め,局所麻酔下に4匹の虫体を摘出した。虫体はクロバエ科のヒトクイバエの3齢幼虫と同定した。摘出1ヶ月後,潰瘍は上皮化し,その後症状の再燃は認めていない。ヒトクイバエは衣服や布団などに付着した虫卵を介して寄生する。寄生を予防するためにはヒトクイバエの生息地域への渡航後は衣服にアイロンをかけることが重要であり,ハエ症を疑った際には,身近な人の渡航歴も聴取する必要があると考えた。(皮膚の科学,13: 415-420, 2014)