皮膚の科学
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症例
皮疹の軽快後に抑うつ状態を発症したカルバマゼピンによる非典型 DIHS の1例
井上 裕香子夏秋 優山本 雅章羽田 孝司今井 康友山西 清文西井 理恵松永 寿人
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2017 年 16 巻 2 号 p. 129-132

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抄録
40歳代,男性。舌咽神経痛に対してカルバマゼピンの内服を開始した1ヶ月後に,発熱,そう痒を伴う皮疹が出現し,徐々に拡大してきたため当科を受診した。初診時,眼周囲を除く顔面全体に紅斑を認め,体幹,四肢にも浮腫性紅斑が多発,融合し,頸部リンパ節腫脹を触知した。肝酵素上昇があり,病理組織では基底層の液状変性,真皮上層の血管周囲性炎症細胞浸潤を認めた。内服薬を中止し,プレドニゾロン 30mg/日の内服を開始した。皮疹と肝機能異常が軽快したため,プレドニゾロンを漸減,中止した。皮疹軽快後のパッチテストではカルバマゼピンで陽性を示したが,リンパ球刺激試験では陰性であった。経過中,ヒトヘルペスウイルス6型,および7型,サイトメガロウイルス,EB ウイルスの再活性化はみられなかったため,本症例をカルバマゼピンによる非典型 DIHS と診断した。退院後に,気分の落ち込み,希死念慮が出現し,当院精神科を受診し,うつ状態と診断された。精神科での抗うつ薬による治療で症状は3ヶ月後には改善した。DIHS では症状が回復した後に自己抗体の出現や自己免疫性甲状腺炎,劇症1型糖尿病などを発症する症例が知られているが,精神症状を来した症例は稀と思われる。(皮膚の科学,16: 129-132, 2017)
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© 2017 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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