2017 年 16 巻 6 号 p. 431-435
50歳代,男性。アトピー性皮膚炎があり,定期的な通院をせず,増悪時のみ受診し,外用療法の習慣がなく重症であった。2016年2月に前医を受診し,シクロスポリン内服等の治療を受けていたが,7月末より高熱が続き,MSSA 菌血症の診断にて前医に入院した。一旦軽快し退院したが,再度発熱を生じ,感染性心内膜炎と診断された。9月,治療のため当院に転院となった。抗生剤治療にて改善せず,三尖弁形成術を施行された。アトピー性皮膚炎は重症であったが,ステロイド外用剤等を用いた標準的な治療により改善した。感染性心内膜炎は多くの合併症を引き起こし,死亡することもある重篤な疾患である。持続的な菌血症を特徴とし,重症のアトピー性皮膚炎は菌血症を引き起こす感染経路となり得る。感染性心内膜炎の頻度は低いものの,アトピー性皮膚炎の重篤な合併症として念頭に置くべき疾患である。また不適切な治療や放置により重篤な感染症を引き起こすリスクについても啓発する必要がある。(皮膚の科学,16: 431-435, 2017)