皮膚の科学
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症例
Peptoniphilus 属による背部壊死性軟部組織感染症の1例
塚田 鏡寿森 智史寺田 瑞希池上 徹栄金井 美馬金子 ゆき山内 瑛小池 真美鈴木 利宏井川 健
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ジャーナル 認証あり

2018 年 17 巻 1 号 p. 16-20

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抄録

 40歳代,男性。既往歴なし。数年前より右背部に粉瘤あり。約3週間前より,右背部に腫脹・疼痛が出現。近医皮膚科にて感染性粉瘤の診断となり,抗菌薬内服を開始した。症状の改善はなく,腫脹・疼痛の増悪と全身状態の悪化を認めたため,当院救急外来を受診した。初診時,右背部には発赤・紫斑・疼痛を伴うバスケットボール大の皮下結節を認めた。触診では,緊満感が強く全体的に握雪感あり。採血上 HbA1c は11.0%と高値で未治療の糖尿病であった。LRINEC スコアは11点と高リスク群に含まれ,qSOFA スコアは 3/3 項目,SIRS は 4/4 項目を満たし敗血症を呈していた。単純 CT では,膿瘍形成と鏡面像を伴うガス像を認め,緊急試験切開にて脂肪織全層から深筋膜および筋組織にかけて広範囲な壊死と膿成分を確認した。背部壊死性軟部組織感染症と診断し,後に創部培養検査から Peptoniphilus 属のみが検出された。可及的デブリードマン施行後,術後4日目より陰圧閉鎖療法を施行した。部分縫縮と分層網状植皮にて創部再建を行い治癒した。Peptoniphilus 属を含むグラム陽性嫌気性球菌群は,一般的に弱毒性であり遅発育性で難同定菌とされる。壊死性軟部組織感染症においては,おもに混合感染の一菌種として検出されることがあり,単独感染として生じることは比較的まれである。全般的に抗菌薬感受性も良好であるため,病原因子の研究なども比較的少ない。近年は系統分類の再検討が進んでおり,病的意義を再認識するとともに,更なる情報の蓄積が必要と考えられた。(皮膚の科学,17: 16-20, 2018)

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© 2018 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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