皮膚の科学
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17 巻, 1 号
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症例
  • 東 禹彦
    2018 年 17 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     10歳代,女性。外用ステロイド薬とディフェリン・ゲル®を顔面に外用していたが,6ヶ月前から顔面に疣状の痂皮性皮疹を多発するようになった。2ヶ月前にY皮膚科でカビによる病気と診断され,2%ケトコナゾール・クリームを処方され,外用を続けたが,治癒しないために当院を受診した。痂皮の組織検査の結果,痂皮中に多数の円形の PAS 陽性菌要素を認め,マラセチアに起因する疾患と診断した。臨床検査には異常をみとめなかった。痂皮を機械的に除去し,イトラコナゾール 100mg/日の内服とリンデロン®Vクリームの外用を行い,40日後には略治した。その後アデスタン®・クリームの外用を行い,初診3ヶ月後には完治した。マラセチア感染により疣状,痂皮性皮疹を生じた症例はこれまで報告がない。(皮膚の科学,17: 1-4, 2018)
  • 神田 泰洋, 内山 真樹, 飛田 璃恵, 坪井 良治
    2018 年 17 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     症例1:20歳代,女性。頭部に多発する脱毛斑を自覚し,その後,全身症状が出現した。初診時,前頭部から頭頂部にかけて,紅斑を伴う脱毛斑を認め,顔面と手指に紅斑と丘疹がみられた。脱毛斑部の病理組織では毛包上皮基底膜部に液状変性と毛包および汗腺・汗管周囲にリンパ球浸潤を認め,蛍光抗体直接法では lupus band test が陽性であった。臨床および病理組織学的所見,血液検査所見も含め,全身性エリテマトーデスに生じた円板状エリテマトーデスによる脱毛と診断した。脱毛部にトリアムシノロンアセトニドの局注を行い,再発毛を認めた。症例2:20歳代,女性。頭部に多発する脱毛斑と関節痛が出現したため,当科を受診。不完全脱毛斑の病理組織および血液検査所見から,全身性エリテマトーデスおよび円板状エリテマトーデスによる脱毛と診断した。脱毛部へのステロイド局注にて著明な発毛がみられた。円板状エリテマトーデスをはじめとした慢性皮膚エリテマトーデスによる脱毛は全身性エリテマトーデスの初期症状としてみられるので全身検索と注意深い経過観察が必要となる。また,円板状エリテマトーデスによる脱毛は原発性瘢痕性脱毛症に分類され,通常不可逆性かつ進行性であるが,今回は病変が初期であり,早期にステロイド局注を開始したことにより,瘢痕性脱毛への進展を防ぐことができた。(皮膚の科学,17: 5-10, 2018)
  • 白鳥 隆宏, 前川 直輝, 今西 明子, 深井 和吉
    2018 年 17 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     20歳代,男性。1年以上前より右頬部に小さな皮疹を自覚していた。初診3ヶ月前から紅斑が増大したため近医皮膚科を受診し,皮膚悪性腫瘍の疑いで当科紹介となった。右頬部に 4.5×2.8mm の潰瘍があり,ダーモスコピーでは潰瘍の辺縁に樹枝状血管を認めた。無色素性の基底細胞癌(basal cell carcinoma:以下 BCC)の疑いで切除生検を施行し,病理組織学的にも基底細胞癌で矛盾はなかった。基礎疾患のない20歳以下で初発の BCC は稀である。さらに,邦人の BCC は大部分で黒褐色調を示すので無色素性であることも比較的稀と考えられる。20歳以下初発での無色素性 BCC の報告例は自験例が初である。本症例では胎生期閉鎖線上の右頬に基底細胞癌が生じていた。本邦の20歳以下に生じた顔面基底細胞癌5症例はすべて閉鎖線上に生じていたことは,基底細胞癌の発症機序を考える上で興味深い。(皮膚の科学,17: 11-15, 2018)
  • 塚田 鏡寿, 森 智史, 寺田 瑞希, 池上 徹栄, 金井 美馬, 金子 ゆき, 山内 瑛, 小池 真美, 鈴木 利宏, 井川 健
    2018 年 17 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     40歳代,男性。既往歴なし。数年前より右背部に粉瘤あり。約3週間前より,右背部に腫脹・疼痛が出現。近医皮膚科にて感染性粉瘤の診断となり,抗菌薬内服を開始した。症状の改善はなく,腫脹・疼痛の増悪と全身状態の悪化を認めたため,当院救急外来を受診した。初診時,右背部には発赤・紫斑・疼痛を伴うバスケットボール大の皮下結節を認めた。触診では,緊満感が強く全体的に握雪感あり。採血上 HbA1c は11.0%と高値で未治療の糖尿病であった。LRINEC スコアは11点と高リスク群に含まれ,qSOFA スコアは 3/3 項目,SIRS は 4/4 項目を満たし敗血症を呈していた。単純 CT では,膿瘍形成と鏡面像を伴うガス像を認め,緊急試験切開にて脂肪織全層から深筋膜および筋組織にかけて広範囲な壊死と膿成分を確認した。背部壊死性軟部組織感染症と診断し,後に創部培養検査から Peptoniphilus 属のみが検出された。可及的デブリードマン施行後,術後4日目より陰圧閉鎖療法を施行した。部分縫縮と分層網状植皮にて創部再建を行い治癒した。Peptoniphilus 属を含むグラム陽性嫌気性球菌群は,一般的に弱毒性であり遅発育性で難同定菌とされる。壊死性軟部組織感染症においては,おもに混合感染の一菌種として検出されることがあり,単独感染として生じることは比較的まれである。全般的に抗菌薬感受性も良好であるため,病原因子の研究なども比較的少ない。近年は系統分類の再検討が進んでおり,病的意義を再認識するとともに,更なる情報の蓄積が必要と考えられた。(皮膚の科学,17: 16-20, 2018)
  • 小嶌 綾子, 辰巳 和奈, 薄井 裕治, 大日 輝記, 椛島 健治
    2018 年 17 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     60歳代,男性。S状結腸癌術後,再発・転移が認められ,初診8ヶ月前より,mFOLFOX6+Bmab 療法,FOLFIRI+Pmab 療法を施行された。食事摂取量は低下し,徐々に下痢,顔面の色素沈着,口内炎の多発を認めるようになった。初診時,顔面,頸部の露光部に鱗屑を伴う浮腫性紅斑,黒褐色の色素沈着,皮膚萎縮を認めた。会話の問いかけに対し反応はやや緩慢であった。血液検査で血中ニコチン酸,トリプトファン濃度の低下を認め,ペラグラと診断した。食事の改善,アミノ酸配合液による補液,ニコチン酸アミド内服により皮疹,下痢,意識障害の改善を認めた。ペラグラはナイアシンの欠乏によって生じる疾患であるが,欠乏のおこる原因は様々である。薬剤によっても欠乏を起こすことがあり,トリプトファンからニコチン酸への代謝の阻害がおこる。原因薬剤の一つに 5-FU が挙げられるが報告例は少ない。本症例では本剤の投与による代謝障害と摂食量の低下が複合的に原因となり,ペラグラを発症したと考えた。(皮膚の科学,17: 21-24, 2018)
  • 住友 理映子, 立石 千晴, 大迫 順子, 楠谷 尚, 大澤 政彦, 鶴田 大輔
    2018 年 17 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
     50歳代,女性。当科初診の約2年前より四肢に紅色丘疹が出現してきた。近医で皮膚生検を3回施行し,リンパ腫様丘疹症(LyP)の診断で加療されていた。自然消退と再発を繰り返していたが,当科初診の約1ヶ月前より潰瘍を伴う結節が新生し,体幹にも拡大し多発してきたため当科紹介受診となった。潰瘍化した結節の病理組織像では,真皮浅層から皮下脂肪織にかけて異型性の核を持つ大型の腫瘍細胞が密に増殖し,表皮向性はなく,CD30 が腫瘍細胞の80%に陽性であった。以上より,LyP に原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(C-ALCL)が生じたと考えた。LyP は,多発性丘疹が消退と再発を繰り返し,病理組織学的には悪性所見を伴うが,予後良好な疾患と考えられていた。しかし,近年は菌状息肉症や C-ALCL,Hodgkin disease などの悪性リンパ腫が経過中に高率にみられると報告されている。LyP 経過中の悪性リンパ腫を早期発見・治療するために,長期的な経過観察が必要であると考えた。(皮膚の科学,17: 25-29, 2018)
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