2018 年 17 巻 6 号 p. 324-327
80歳代,男性。 2 年前より右こめかみに茶褐色斑を自覚していた。徐々に増大し一部が隆起したため,気になって掻破を繰り返し,出血を伴ったため受診した。右こめかみに 17×10 mm の痂皮を伴う黒色腫瘤を認めた。病理組織学的に病変辺縁部では脂漏性角化症,その他の部分ではボーエン病の所見を呈していた。以上から,自験例を脂漏性角化症とボーエン病の合併と診断した。一般に脂漏性角化症は良性腫瘍であり,必ずしも治療の必要はないが,稀ながら皮膚悪性腫瘍を合併することが報告されており,痂疲やびらんを伴った場合には,皮膚悪性腫瘍との合併も念頭に置き診療に当たる必要がある。 (皮膚の科学,17 : 324-327, 2018)