2019 年 18 巻 5 号 p. 279-282
71歳,男性。他院にて切除生検された右下顎部結節の病理組織像が悪性であったため,当科を紹介受診した。切除生検の標本では,真皮から皮下にかけて線維性隔壁によって区画された粘液基質に浮遊する腫瘍細胞巣がみられた。腫瘍細胞は濃染するクロマチンを有する核と好塩基性の細胞質を有していた.また,部分的に小管腔構造を伴っていた。腫瘍細胞は,CK7 陽性であり,CK20 およびGCDFP15 は陰性であった。線状瘢痕から 10 mm マージンの追加切除切片には残存する腫瘍細胞はなかった。FDG-PET/CT においては,他部位に集積を示さなかった。最後の切除術から12ヶ月経過しているが,局所再発および遠隔転移を認めていない。右下顎部の mucinous carcinoma of the skin の典型例を報告した。Mucinous carcinoma of the skin は metastatic mucinous carcinoma との鑑別が重要であり,今後のさらなる症例の集積が必要である。 (皮膚の科学,18 : 279-282, 2019)