皮膚の科学
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症例
抗 PD-1 抗体薬投与中に生じた乾癬様皮膚炎
―紫外線療法が奏効した 1 例―
中田 千華谷崎 英昭鄭 韓英黒川 晃夫森脇 真一
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2019 年 18 巻 6 号 p. 353-359

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抄録

78歳,男性。当科初診の 5 年前に膀胱癌と診断され,左腎尿管膀胱全摘術およびゲムシタビン・シスプラチンによる化学療法が施行された。その後両側閉鎖リンパ節が腫大したため,初診 1 年前より抗 PD-1 抗体薬の 1 つであるペムブロリズマブが投与された。初診 2 週間前から全身に紅斑が出現したため当科紹介となった。初診時,全身に鱗屑を有する境界明瞭な紅斑が多発し瘙痒を伴っていた。 病理組織学的には角層は肥厚し,一部で錯角化がみられた。表皮は表皮突起の延長を伴って肥厚し顆粒層は菲薄化していた。また角層から表皮上層にかけて多数の好中球浸潤が認められた。真皮上層から中層にかけて好酸球を含む炎症細胞浸潤がみられた。以上より,本症例をペムブロリズマブにより生じた乾癬様皮膚炎と診断した。一旦同剤を休薬とし,副腎皮質ステロイド,ビタミン D3 外用および抗ヒスタミン薬内服を開始したが紅斑はさらに拡大した。ナローバンド UVB による紫外線療法を併用したところ,紅斑,瘙痒ともに改善傾向を示した。その後ペムブロリズマブを再開したが,再開後 3 ヶ月経過した現在,乾癬様皮疹の再燃はみられず経過良好である。抗 PD-1 抗体薬による乾癬様皮膚炎には紫外線療法も治療の一つの選択肢である可能性が示唆された。 (皮膚の科学,18 : 353-359, 2019)

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© 2019 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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