皮膚の科学
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症例
肝細胞癌に対する経肋間動脈的化学療法により生じた皮膚傷害の1例
本田 哲也松島 佐都子藤井 忍澤武 建雄大崎 往夫堀口 裕治
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2003 年 2 巻 1 号 p. 18-22

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抄録
63歳,男性。C型肝炎ウイルスによる肝硬変に肝細胞癌を併発し,肝S8部分切除術を施行後,肝内再発に対し経動脈的化学療法を繰り返し行っていた。平成14年3月25日,腫瘍の栄養動脈となっていた右第10肋間動脈よりリピオドールとマイトマイシン,ファルモルビシンの懸濁液を注入した。翌日より右側背部に疼痛をおぼえ,3日後には浸潤を伴う紅斑が帯状に出現した。組織学的検査では一部の表皮および付属器の壊死,一部の細小血管内皮細胞の膨化,血管周囲の好中球浸潤,赤血球の漏出などが見られたものの,膠原線維の変性や広範囲の壊死はみられなかった。アクリノール液にて冷湿布を続けたところ,3週間で炎症は消退したが一部に難治性の潰瘍が残った。リピオドールの阻血効果と抗癌剤の作用により表皮と血管内皮の傷害が生じたと考えた。
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© 2003 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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