抄録
共に肝障害を持つ63歳と51歳の重症熱傷患者2例を報告する。2例ともに血液検査上,肝機能及び凝固機能が低下していた。手術時の創部より止血異常による大量出血があり,その際,第VII,XIII因子の低下を認めた。止血異常は凝固因子低下によるものと考え,FFPの持続投与,第XIII因子製剤の輸血などを施行し,データは改善した。両症例ともこれらをふまえ,次回の手術の前にFFP,ビタミンKなどの持続投与を行い,凝固系のデータの回復を確認後,手術を施行した。次回の術中,術後の出血は軽度であった。肝及び凝固機能低下を伴う熱傷手術症例に対しては,経過中に凝固機能を正確に把握し,補充療法によって凝固機能を安定化させることが重要と考えられた。