皮膚の科学
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2 巻, 1 号
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カラーライブラリー
研究
  • 岡本 祐之, 水野 可魚, 河本 慶子, 堀尾 武
    2003 年 2 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    入院中の皮脂欠乏性皮膚炎患者16名を対象に,その痒みの程度と抗アレルギー薬の早期止痒効果をVAS(Visual Analogue Scale)により評価した。痒みの評価は調査期間中,朝食時と夕食時の1日2回患者本人が記入し,それぞれ夜間の痒み(夜から早朝までの痒み),昼間の痒み(朝から夕方までの痒み)とした。また,抗アレルギー薬としては,オキサトミドと塩酸エピナスチンを使用し,クロスオーバー試験を実施し,その早期止痒効果を比較検討した。
    薬剤投与前の観察期における皮脂欠乏性皮膚炎の痒みは,昼間の痒み(29.5±6.2)より夜間の痒み(40.6±7.0)の方が高値を示した。薬剤の効果は,オキサトミド投与により,昼間の痒み(27.4±6.8→10.9±5.2),夜間の痒み(44.6±7.2→10.4±3.4)ともに有意に低下した。一方,塩酸エピナスチン投与も,昼間の痒み(34.8±7.0→16.4±6.0)は有意な低下が認められたが,夜間の痒み(34.3±6.2→22.6±7.7)は低下したものの有意差は認められなかった。
    以上のことより皮脂欠乏性皮膚炎に対して,オキサトミドは早期より止痒効果が期待できる薬剤と考えられた。
症例
  • 須貝 哲郎, 田水 智子, 原田 周子
    2003 年 2 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    食事に用いられる香料の一部を香辛料とよぶが,その接触アレルギーの報告はクローブとメントールを除いてほとんどない。当科ではパッチテスト用香辛料アレルゲンとしてメントール,カンフル油,ペパーミント油,クローブ,赤唐辛子,キャラウエイ,コリアンダー,ジンジャー,タイム,山椒,ナッツメグ,グリロイド,白コショウ,ローレル,ビタゲンの15種を香辛料標準アレルゲンとして用いているが,今回は香辛料による多感作2例とグローブ油による1例を報告する。口唇の接触皮膚炎はアレルギー反応でもそう痒を伴わず,アレルゲンが多彩なので注意が肝要である。
  • 尾本 陽一, 山中 恵一, 稲葉 智子, 今田 微香, 伊藤 芳幸, 波部 幸司, 杉本 恭子, 磯田 憲一, 水谷 仁
    2003 年 2 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    共に肝障害を持つ63歳と51歳の重症熱傷患者2例を報告する。2例ともに血液検査上,肝機能及び凝固機能が低下していた。手術時の創部より止血異常による大量出血があり,その際,第VII,XIII因子の低下を認めた。止血異常は凝固因子低下によるものと考え,FFPの持続投与,第XIII因子製剤の輸血などを施行し,データは改善した。両症例ともこれらをふまえ,次回の手術の前にFFP,ビタミンKなどの持続投与を行い,凝固系のデータの回復を確認後,手術を施行した。次回の術中,術後の出血は軽度であった。肝及び凝固機能低下を伴う熱傷手術症例に対しては,経過中に凝固機能を正確に把握し,補充療法によって凝固機能を安定化させることが重要と考えられた。
  • 本田 哲也, 松島 佐都子, 藤井 忍, 澤武 建雄, 大崎 往夫, 堀口 裕治
    2003 年 2 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    63歳,男性。C型肝炎ウイルスによる肝硬変に肝細胞癌を併発し,肝S8部分切除術を施行後,肝内再発に対し経動脈的化学療法を繰り返し行っていた。平成14年3月25日,腫瘍の栄養動脈となっていた右第10肋間動脈よりリピオドールとマイトマイシン,ファルモルビシンの懸濁液を注入した。翌日より右側背部に疼痛をおぼえ,3日後には浸潤を伴う紅斑が帯状に出現した。組織学的検査では一部の表皮および付属器の壊死,一部の細小血管内皮細胞の膨化,血管周囲の好中球浸潤,赤血球の漏出などが見られたものの,膠原線維の変性や広範囲の壊死はみられなかった。アクリノール液にて冷湿布を続けたところ,3週間で炎症は消退したが一部に難治性の潰瘍が残った。リピオドールの阻血効果と抗癌剤の作用により表皮と血管内皮の傷害が生じたと考えた。
  • 石田 勝英, 笹橋 真紀子, 是枝 哲, 錦織 千佳子, 宮地 良樹, 安田 義
    2003 年 2 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は74歳,女性。以前より手指・足趾関節に変形と疼痛,顔面に紫紅色斑を認め,抗核抗体とレイノー症状が陽性のため膠原病が疑われ当科を紹介受診した。顔面・手背の紫紅色斑は凍瘡様皮疹を呈し,その皮膚生検にて真皮層に非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫を認めた。胸部X線とCTにて両側肺門リンパ節の腫大を認め,眼には隅角結節を認めた。またツベルクリン反応は陰性であった。以上より本症例をびまん浸潤型皮膚サルコイドーシスすなわちlupus pernioと診断した。抗核抗体・抗セントロメア抗体陽性で,膠原病とくに強皮症の合併が疑われたが他の所見に乏しく診断基準は満たさなかった。
  • 長町 美野子, 土岐 真理子, 勝田 潤子, 荻野 篤彦
    2003 年 2 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    脂漏性角化症は中高年に生じる良性表皮腫瘍で,加療しないかぎり通常は消退することはない。しかし,ときに炎症症状を呈して数日後に自然脱落することが知られている。Bermanらによると脂漏性角化症の自然消退には,1)表皮塊がねじれ摘ままれて乳頭状となって脱落するもの,2)偽性角質嚢疱が病変の中を貫いて脱落するもの,3)真皮上層の単核球の浸潤が関与して脱落するもの,の3型があるという。自験例は(1)の形式に相当するものと思われる。
  • 新井 康泰, 草壁 秀成, 清金 公裕
    2003 年 2 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    44歳, 男性。幼少時より左側頭部に淡褐色調脱毛斑が存在し放置していたが徐々に隆起し,初診の約1年前より同部位に腫瘤が生じ増大してきた。初診時,左側頭部に4×2cm,淡褐色調で皮膚面より軽度隆起する局面が存在し,その上に3×2×1.5cmの赤色調に浸軟した腫瘤が存在した。病理組織学的に脂腺母斑上に乳頭状汗管嚢胞腺腫,管状アポクリン腺腫,アポクリン汗嚢腫,汗管腫様の腫瘍が併発したことを確認した。また,免疫組織化学的にすべての腫瘍に対しgross cystic disease fluid protein (GCDFP-15)陽性であった。
  • 前島 英樹, 嶋村 祐美, 白井 京美, 原田 晴美, 衛藤 光
    2003 年 2 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    無色素性基底細胞上皮腫,邦人2症例を報告した。症例1は57歳女性。鼻背に常色のド-ム状隆起性腫瘤があり,組織では基底細胞様細胞の増殖よりなる胞巣構造を認めた。症例2は36歳男性。鼻梁に淡紅色のド-ム状隆起性腫瘤があり,組織では真皮浅層では基底細胞様細胞の増殖よりなる胞巣構造を認めた。自験2例ともtrichoepithelioma, trichoblastoma, desmoplastic trichoepitheliomaとの鑑別のため,anti-human epithelial membrane antibody(EMA), anti-cytokeratin20 antibody, anti-NSE anti-body, anti-chromogranin antibody, anti-bcl-2 antibodyおよびanti-CD34 antibodyを用いて免疫染色を行い検討した。また,当科における基底細胞上皮腫65例を集計した。それと同時に過去10年間に報告された無色素性基底細胞上皮腫12例をあわせて集計し,臨床および組織について検討を加え,分類を試みた。
  • 山崎 文恵, 上埜 剣吾, 松下 記代美, 荒金 兆典, 川田 暁, 手塚 正
    2003 年 2 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    Cholesterotic fibrous histiocytomaはfibrous histiocytomaのまれなバリアントである。腫瘍内のコレステロール様の沈着物および高脂血症との関連からこの型の皮膚線維腫では末梢循環血液に由来するコレステロール様物質の沈着に組織球が関与した反応と考えられている。
    今回我々は高脂血症を伴わないcholesterotic fibrous histiocytomaの1例を経験したので報告する。
  • 西原 清子, 加茂 理英, 石井 正光
    2003 年 2 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    70歳,男性。陰嚢右側の無症候性腫瘤を主訴に来院した。13mm×9mmの広基性腫瘤で,表面平滑,弾性硬,下床との可動性は良好であった。Leiomyoma, epidermal cystなどを考え切除した。腫瘍は真皮内に限局し,辺縁で肉様膜と連続していた。腫瘍細胞は両端鈍な直線状で,中央に辺縁鈍な長紡錐形の核を認め,核周囲に空胞がみられた。核異型や核分裂像はみられなかった。免疫組織学的染色において,腫瘍,肉様膜ともアクチン,デスミンが陽性であり,陰嚢部肉様膜より生じたsolitary genital leiomyomaと診断した。
  • 土屋 知子, 岸本 恵美, 滝沢 三久, 轟 葉子, 守屋 修二, 江藤 隆史
    2003 年 2 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    58歳,男性。初診平成13年11月。10年前より顔面に紅褐色丘疹,結節,2年前より胸背部に同様の皮疹が出現した。初診時,顔面,胸背部に大豆大までの浸潤のある紅褐色局面散在し,頚部,腋窩,鼡径部に拇指頭大までのリンパ節腫脹を認めた。血液検査で,貧血,高蛋白血症および多クローン性高ガンマグロブリン血症が認められた。皮膚組織で,真皮中層血管周囲に稠密な異型性のない形質細胞浸潤,頚部リンパ節および骨髄でも著明な形質細胞浸潤を認めた。全身性形質細胞増多症と診断し,プレドニゾロン40mg/日より内服にて皮疹は軽度改善した。血液所見においても貧血,総蛋白の改善を認めた。全身性形質細胞増多症の治療について若干の文献的考察を加えた。
使用試験
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