皮膚の科学
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症例
放射線照射を施行した乳房外パジェット病の 6 例
谷村 裕嗣津田 真里四十万谷 貴子長野 奈央子中丸 聖槇村 馨清原 隆宏
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2021 年 20 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

乳房外パジェット病の標準治療は十分な切除マージンによる外科的切除であるが,肛門や尿道の切除,人工肛門や尿路変更などにより,著しく QOL を損なうことも多い。手術不能の乳房外パジェット病に対して放射線治療が選択されることがあるが,まとまった報告は少なく,根治的放射線照射の意義は確立していない。本人希望や認知症などの理由で放射線照射を選択した 6 名について報告する。平均年齢は78.3歳で,男女比は 1:5 であった。照射後の平均観察期間は32.7ヶ月,平均放射線照射量は 51 Gy であった。全例において, 6 ヶ月後には病変は肉眼的に消失した。副作用は皮膚びらんが 2 例,皮膚カンジダ症が 1 例であった。経過中の再発は 2 例で,平均13ヶ月時であった。 1 例は局所切除のみでその後の再発はないが,もう 1 例は尿道浸潤があり,膀胱尿道全摘術が行われたが腹膜炎の併発により永眠された。侵襲が大きい外科的切除を要する乳房外パジェット病に対し,QOL 維持の観点から放射線照射は有用である。再発リスクは高い可能性があり,注意深く経過観察する必要がある。 (皮膚の科学,20 : 11-17, 2021)

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© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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