皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
症例
アナフィラキシーショックを合併した急性感染性蕁麻疹の 1 例
前田 泰広高橋 聡文小池 隆弘加藤 威中西 健史田中 俊宏
著者情報
ジャーナル 認証あり

2021 年 20 巻 1 号 p. 6-10

詳細
抄録

78歳,女性。意識消失,全身広範囲の紅斑,血圧低下よりアナフィラキシーショックと診断され加療後,当科に搬送され入院となった。入院時,発熱があり,アナフィラキシーは軽快していたが体幹 四肢に浮腫性紅斑が多発し,血液検査では軽度の炎症所見とDダイマーの顕著な上昇(30.6 μg/mL,当院正常範囲 <0.9 μg/mL)を認めた。病理組織学的検査では血管炎はみられず,真皮浅層の浮腫と浅層から中層にかけての血管周囲性のリンパ球,好中球,好酸球などの浸潤が主要所見であった。抗ヒスタミン剤による治療に反応せず,提唱されている急性感染性蕁麻疹の診断条件を満たしたため抗菌剤を併用したところ浮腫性紅斑は色素沈着を残して改善し,Dダイマーも顕著に低下した。感染源は同定できなかったが,診断条件を満たしたことと臨床経過より急性感染性蕁麻疹と診断した。諸検査で,前医でみられた意識消失,血圧低下の原因となりうる異常はなく,アナフィラキシーショックは急性感染性蕁麻疹に伴うものと診断した。Dダイマー上昇についても原因となりうる他の異常は見いだされず,本病態に付随したものと考えた。急性感染性蕁麻疹が,アナフィラキシーと診断される他臓器症状を伴ったとの報告が少数ながらあり,診療にあたり注意が必要と思われた。また,蕁麻疹と凝固系の関連について近年明らかになってきた知見から,急性感染性蕁麻疹では高度のDダイマー上昇を来す可能性があることが推測された。 (皮膚の科学,20 : 6-10, 2021)

著者関連情報
© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
前の記事 次の記事
feedback
Top