2021 年 20 巻 3 号 p. 203-207
89歳,男性。約20年前から右下腹部に結節を自覚し,徐々に増大した。35×26×8mm大,表面は一部びらんし,乳頭状から顆粒状,粗造な有茎性の結節で,淡紅色∼紅褐色,黒褐色が混じていた。 ダーモスコピー所見では脂漏性角化症の所見が優位であったが,部分的に milky red areas を背景とした不整な血管所見が見られたので同部から皮膚生検を施行し,悪性黒色腫の診断となった。切除標本の病理組織学的所見では脂漏性角化症および悪性黒色腫が隣接し,中央で入り混じるように増殖していた。以上から脂漏性角化症と悪性黒色腫の collision tumor と診断した。大部分を良性成分で構成された腫瘍内に悪性腫瘍を疑う所見があった場合は皮膚生検を積極的に行うことは重要と考える。 (皮膚の科学,20 : 203-207, 2021)