2021 年 20 巻 3 号 p. 212-215
精神遅滞のある65歳男性。約 2 年前より後頭部に約 1∼2cm大の腫瘤が出現し,出血を認めていたが,放置していた。徐々に腫瘤が拡大し,排膿を認め,当院に紹介受診となった。初診時,4×6 cm 大の悪臭を伴う出血性の腫瘤を認め,生検を施行して,基底細胞癌と診断された。本人,家族が入院手術を拒否しており,腫瘍の大きさ,患者の状況から外科的切除は困難と判断し,通院にて放射線治療を開始し,計 69 Gy を照射した。腫瘍は徐々に縮小し,残部位に液体窒素療法を追加したところ,さらに縮小した。瘢痕部位に対して皮膚生検を施行したが,病理組織では,基底細胞癌の残存はなく瘢痕のみであった。切除困難な巨大基底細胞癌に対して,放射線治療も選択肢の 1 つになると思われる。 (皮膚の科学,20 : 212-215, 2021)