皮膚の科学
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症例
ヒト乳頭腫ウイルスワクチンで加療した有棘細胞癌
須藤 ゆか石塚 洋典藤本 学
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2022 年 21 巻 3 号 p. 194-199

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抄録

30歳女性。 1 年前より肛門部に腫瘤が出現し,増大したため当科を紹介受診した。肛門∼外陰部に広範囲な腫瘍性病変を認め,病変部擦過細胞診よりヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus :HPV)-DNA を検出した。生検にて肛門部腫瘤を有棘細胞癌(squamous cell carcinoma : SCC)と診断したが,病変の大半は上皮内異形成の状態によって占められていた。病変が広範囲であり,術後Qualityof LifeQOL)の低下を招く可能性が高く,かつ両側骨盤内リンパ節転移も疑われたため根治手術は困難と考えられた。化学放射線療法を提案したが,患者側に妊孕性への影響等の化学療法に対する不安感が強く,治療に対して消極的であった。今回我々は自己免疫疾患に対する免疫抑制治療中に続発した HPV 関連 SCC に対して,有効例の報告がある HPV4 価ワクチン(ガーダシルR )の局所投与を行った。HPV4 価ワクチン初回投与 4 週間後に外陰部の潰瘍の一部に上皮化傾向を認めたが,肛門部腫瘤は明らかに増大していたため,化学療法を追加した。その後,潰瘍性病変は上皮化し,肛門部腫瘤は扁平化傾向を認めた。本例における治療的有効性に関して,HPV4 価ワクチンと化学療法のどちらが奏功したか判断することは困難であり,今後の経過観察が必要と考える。 (皮膚の科学,21 : 194-199, 2022)

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© 2022 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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