2022 年 21 巻 3 号 p. 200-205
61歳,男性。鼻腔・口腔粘膜のびらんと,体幹四肢の緊満性水疱を主訴に当科を受診した。病理組織学的に表皮下水疱であり,蛍光抗体直接法では基底膜部に IgG,C3 の線状沈着を認めた。Split skin を用いた蛍光抗体間接法では IgG が真皮側に陽性であった。真皮抽出液を用いた免疫ブロット法で患者血清は 290 kDa の抗原に反応し,ELISA 法で抗Ⅶ型コラーゲンが検出された。以上より,抗Ⅶ型コラーゲン抗体による粘膜類天疱瘡と診断した。プレドニゾロン内服により皮膚病変は容易に改善したが粘膜病変は遷延し,血漿交換療法,免疫グロブリン大量静注療法,ジアフェニルスルホン,アザチオプリン,テトラサイクリン/ニコチン酸アミドの併用でようやく軽快した。重症で非常に難治性の粘膜症状を呈する粘膜類天疱瘡では,皮膚症状を主とする後天性表皮水疱症と抗Ⅶ型コラーゲン抗体の抗原エピトープが異なる可能性があると考えた。 (皮膚の科学,21 : 200-205, 2022)