皮膚の科学
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症例
副腎皮質ステロイド局注により寛解した形質細胞性口唇炎の 1 例
太田 梓東山 礼一野首 光弘猪爪 隆史
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2022 年 21 巻 3 号 p. 206-211

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抄録

70歳,男性。初診 2 ヶ月前に下口唇に紅斑,びらんを自覚した。近医皮膚科にて加療されたが改善せず,当科を紹介受診した。下口唇に紅斑,びらん・潰瘍,痂皮を認め,病理組織学的には表皮が欠損し真皮浅層から中層に形質細胞浸潤を認めた。免疫染色では免疫グロブリンの κ 鎖,λ 鎖それぞれの陽性細胞が同程度に混在していた。形質細胞性口唇炎と診断し,ステロイド剤外用で症状が改善しなかったためステロイド局注を行ったところ改善し,以後 1 年間再燃を認めていない。形質細胞性口唇炎は比較的まれな疾患で,治療法が未だ確立していない。良性疾患であるが鑑別に悪性腫瘍も含まれ,本疾患より発生した有棘細胞癌が複数報告されていることから,口唇に難治性のびらん・潰瘍を認めた場合は早期に皮膚生検による診断を行うことが重要である。また外用治療による症状改善が乏しい場合は積極的にステロイド局注を検討し,治療後も慎重に経過観察を行うことが重要である。 (皮膚の科学,21 : 206-211, 2022)

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© 2022 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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