症例 1 は58歳女性。前医で右臀部の腫瘤をメルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma ; MCC)と診断され,当科紹介受診となった。骨盤内リンパ節転移を伴っており,アベルマブ投与,放射線療法を行うも効果に乏しく癌専門病院へ紹介となった。紹介先での Carboplatin(CBDCA),Etoposide (VP-16)による化学療法も奏効せずターミナルケア専門病院へ転院となった。症例 2 は87歳女性。 前医で MCC と診断された右鼻背部原発腫瘍の増大,頸部リンパ節や右頬部への転移が存在したため当科紹介受診となった。アベルマブの投与を開始し,右頬部転移巣の姑息的切除術を施行したが,腫瘍は増大した。癌専門病院へ紹介し,Cisplatin(CDDP),VP-16 による化学療法で腫瘍は一時縮小したが,再度病勢が増悪し死亡した。今回経験した症例は切除不能な進行期 MCC であり,アベルマブの適応となる症例であった。しかし,アベルマブの奏効率に関する過去の報告と比較すると,自験例はいずれもアベルマブが奏効しにくい症例であった可能性が考えられた。 (皮膚の科学,22 : 126-132, 2023)