2023 年 22 巻 4 号 p. 298-302
施設入所中の85歳男性。意識障害で救急搬送され,挿管管理目的に ICU に入室した。ICU 入室後の診察で右下肢の淡い紅斑と熱感を認め,血液培養でグラム陽性球菌が検出された。そのため右下肢蜂窩織炎からの菌血症と診断した。また,意識障害に関しては敗血症性脳症または敗血症に起因した急性症候性発作と診断した。抗菌薬治療を開始後,菌種が Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis(SDSE)と同定された。抗菌薬,抗けいれん剤が投与され,右下肢蜂窩織炎とそれに伴う意識障害とも改善した。SDSE による感染症は高齢化とともに増加傾向であり基礎疾患のある患者では重症化に注意が必要である。意識障害をきたす病態の一つとして敗血症などの感染症が知られている。頻度は低いと思われるが蜂窩織炎でも意識障害を生じることがある。重症でない蜂窩織炎でも意識障害の原因となりうることを,皮膚科医として認識する必要があると考える。 (皮膚の科学,22: 298-302, 2023)