皮膚の科学
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症例
免疫抑制患者に生じた Mycobacterium haemophilum による 皮膚非結核性抗酸菌症の 1 例
荒金 布真坂井 浩志藤本 学
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2024 年 23 巻 2 号 p. 87-92

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抄録

67歳,男性。当科初診の 1 ヶ月前より右下腿に瘙痒を伴わない小結節が出現。原因不明の感染症が疑われ当院血液腫瘍内科より当科紹介となった。初回診察時,右足は暗赤色調に腫脹し,潰瘍を伴う小結節が散在し排膿がみられた。また,右下腿から右大腿にかけて同様の小結節が散在していた。併存するネフローゼ症候群に対してシクロスポリン 75 mg/日とプレドニゾロン 3mg/日を長期内服中であった。初診時,右足背の潰瘍部分のぬぐい液を細菌培養検査に提出し,右大腿部の結節を生検した。病理組織学的所見にて,真皮浅層に好中球や組織球を含む軽度の炎症細胞浸潤を認めた。一方真皮深層には肉芽腫が見られ,好中球を主体とする密な炎症細胞浸潤による膿瘍形成と多核のLanghans 型巨細胞が散見された。乾酪壊死像は認めなかった。さらに Grocott 染色,PAS 染色が共に陰性であった。皮膚病変部の抗酸菌培養検査により培養 4 週目に細菌の増殖を認め,遺伝子塩基配列分析により Mycobacterium haemophilum と同定し,最終的に同菌による皮膚非結核性抗酸菌症と診断した。治療としては抗菌剤の 3 剤内服療法が著効し(クラリスロマイシン 800 mg/日,シプロフロキサシン 400 mg/日,リファンピシン 450 mg/日), 3 剤内服開始 3 ヶ月後には右大腿,下腿の潰瘍が消失し,17ヶ月後に右足背の潰瘍もすべて消失したので内服を終了した。Mycobacterium haemophilum 感染症は稀に遭遇する疾患であるが,免疫抑制作用を呈する薬剤が頻用される現在において念頭に置くべき疾患と考えた。 (皮膚の科学,23 : 87-92, 2024)

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© 2024 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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