抄録
71歳,男性。syringomatous carcinoma(SC)の1例を報告した。初診の約5年前に右手背の小指側に直径5mmほどの無症候性の丘疹を自覚していた。その後,病変は次第に増大し,中央が潰瘍化し,疼痛も伴ってきたので当科を受診した。初診時,右手背に4×8cmの暗紫赤色の硬い局面があり,皮表よりわずかに盛り上がり,中央部に2×3.5cmの潰瘍が見られた。生検標本から有棘細胞癌が疑われ,全摘した。切除標本の病理組織像ではオタマジャクシ様の管腔を含めた汗管・汗腔様構造が多数見られ,骨浸潤を伴ったSCと診断した。文献的考察を加えたが,本邦例において手部での発生例が多いことが示された。