皮膚の科学
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ヒト真皮線維芽細胞の体の部位による形質の違い : 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)に対する反応性の検討
安田 正人石川 治高橋 健造宮地 良樹
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2006 年 5 巻 Suppl.6 号 p. A21-A25

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抄録

ヒトの皮膚,特に表皮組織は,頭部・顔面・口唇・躯幹・掌蹠など体の部位により様々に異なる形態を呈する。その違いは主に毛包や脂腺などの付属器の多寡や表皮角化細胞の構築の違いなどにより説明されるが,近年,真皮線維芽細胞もヒトの身体の部位によって異なる生化学的な性質を有することが徐々に明らかとなってきている。我々は,この真皮線維芽細胞の部位特異的な形質を明らかにするため,メンブレン型アレイを用いて,躯幹・掌蹠・口腔粘膜の線維芽細胞が発現する細胞外基質ならびに接着因子の遺伝子発現を比較した。その結果,躯幹線維芽細胞では,carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule(CEACAM)-5が特異的に発現するなど,部位による線維芽細胞の生化学的な違いが明らかとなった。
さらに創傷治癒過程における線維芽細胞の部位による違いを考察するために,各部位由来の線維芽細胞へ,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加した後の反応性について検討した。口腔粘膜由来の線維芽細胞は,躯幹や掌蹠の線維芽細胞に比しbFGFへの高い反応性を示した。口腔粘膜は,躯幹などに比べ,創傷治癒が速く,瘢痕形成が少ないことはよく知られている。口腔粘膜線維芽細胞のbFGFへの反応性の高さが,どのような機序によるものかは不明であるが,粘膜における創傷治癒の速さの一因となっているかと考えた。この機序を明らかにすることで,より有効な創傷治療へと結びつく可能性があると考える。

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© 2006 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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