抄録
最近の痛み研究の進展につれて痒みの研究も盛んになってきた。痛み・痒みには共通点も多い。どちらも生体警告反応として無くてはならないが,病的な状態,例えば炎症や神経損傷に伴うものは慢性化して苦痛となる。痛み・痒みを受容するC-線維の終末には多くの受容体が発現し,熱・機械・化学刺激に反応する。痛み・痒みに共通のメディエーターも多い。ヒスタミンの痒みを伝えるC-線維,伝達系,脳の活性化領域についてはかなり明らかになっているが,慢性掻痒,例えばアトピー性皮膚炎の痒みを起こす物質,伝達機構には不明な点が多い。痛み・痒みの慢性化は,神経系の可塑的変化に起因するので,早期に痛み・痒みを抑えることが重要である。