皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
症例
乳酸脱水素酵素 (LDH) 低下を伴う全身性形質細胞増多症の2例
瀧 玲子松村 由美谷岡 未樹是枝 哲石川 隆之宮地 良樹
著者情報
ジャーナル 認証あり

2010 年 9 巻 5 号 p. 469-475

詳細
抄録

症例1:60歳代,男性。初診の2年前に顔面および背部に多数の暗褐色斑が出現した。左鼠径部リンパ節の腫脹がある。皮膚およびリンパ節の生検標本において多クローン性の形質細胞の浸潤を認めた。IgG は 2,702mg/dl に上昇した。自覚症状や他臓器病変はなく経過を観察してきたが,初診の2年後にプレドニゾロン 15mg/日の投与を開始した。経過中,発熱や全身倦怠感を伴わなかった。経過とともに乳酸脱水素酵素 (LDH) の低下が進行し,最低値は 100IU/l であった。症例2:50歳代,男性。初診の4~5年前に腹部を中心に紅斑と褐色斑が出現した。皮疹は次第に増加し,躯幹のほぼ全体に米粒大から小豆大の褐色斑が散在するようになり,微熱および全身倦怠感を伴った。表在性リンパ節の腫脹がある。皮膚生検標本には真皮に形質細胞の浸潤を認めた。IgG は 5,100mg/dl に上昇した。胸部 CT では右肺野に淡いスリガラス陰影が散見され,リンパ球性間質性肺炎の像であった。プレドニゾロン 15mg/日の投与を開始したところ,微熱と倦怠感は消失したが,皮疹は改善しなかった。経過中の LDH の最低値は 102IU/l であった。LDH-免疫グロブリン複合体形成により LDH 活性が阻害されるとの過去の報告がある。過剰に産生された免疫グロブリンが LDH の低下につながったと推測され,LDH 値は全身性形質細胞増多症において病勢を反映するマーカーとなる可能性がある。

著者関連情報
© 2010 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
前の記事 次の記事
feedback
Top