皮膚の科学
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9 巻, 5 号
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カラーライブラリー
研究
  • 中島 弘明, 石堂 裕子, 芋川 玄爾
    2010 年 9 巻 5 号 p. 442-451
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    真皮マトリックス蛋白分解酵素であるコラゲナーゼI (MMP-1) やヒト線維芽細胞由来エラスターゼ (SFE) は,紫外線によるシワやたるみの発生と関連が深い。UVA 曝露培養ヒト真皮線維芽細胞におけるこれら酵素の発現増強に対するフラビンモノヌクレオチド (FMN) の UVA 照射直後の添加による効果を調べた。UVA 照射12時間後に有意に上昇する SFE 遺伝子発現は,FMN 0.2,1.0μg/ml の添加で有意に減少した。UVA 照射72時間に有意に増加する SFE 蛋白発現は,FMN 5.0μg/ml の添加で有意に減少した。また,UVA 照射72時間後に有意に増加する SFE 酵素活性は,FMN 0.2,5.0μg/ml 添加で有意に減少した。MMP-1 についても同様であり,UVA 照射24時間後に有意に上昇する MMP-1 遺伝子発現は,FMN 1.0,5.0μg/ml 添加で有意に減少し,UVA 照射72時間後に有意に増加する MMP-1 蛋白発現と酵素活性は,FMN 1.0μg/ml 添加で有意に減少した。以上の結果より,FMN は UVA 曝露ヒト真皮線維芽細胞での SFE と MMP-1 の遺伝子発現,蛋白発現および酵素活性の上昇を,程度は弱いが抑制する作用を示し,今後 in vivo 実験での検証が必要ではあるが,FMN は UVA 照射で引き起こされるシワやたるみを予防する効果を有する可能性が示唆された。
  • 西村 明子, 夏秋 優, 山西 清文
    2010 年 9 巻 5 号 p. 452-457
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    健常人男性16名に対し小柴胡湯,麻黄附子細辛湯およびその構成生薬であるサイコ,オウゴン,マオウ,ホウブシによる薬剤リンパ球刺激試験 (drug-induced lymphocyte stimulation test; DLST) を行った。その結果,ホウブシで14名,サイコで8名,小柴胡湯,麻黄附子細辛湯,オウゴンで5名が stimulation index 値181%以上を示した。一方,マオウではすべての対象者で陰性を示した。また,対象者における個々の漢方薬の服薬歴の有無と DLST の結果には関連を認めなかった。以上より,漢方薬による薬疹の原因検索として DLST を実施する際には,偽陽性や偽陰性反応に注意する必要がある。
症例
  • 武井 怜子, 夏秋 優, 山西 清文
    2010 年 9 巻 5 号 p. 458-461
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    62歳,女性。数年前から背部,腰部を中心にそう痒を伴う浸潤性紅斑が出現し,再発を繰り返すため当科を受診した。背部の皮疹の生検所見から多形紅斑と診断した。抗アレルギー薬の内服とステロイド薬の外用,内服で軽快するが,皮疹は再燃を繰り返した。経過中,この皮疹の出現に先行して殿部に単純疱疹を生じることが判明し,単純疱疹に関連した多形紅斑と診断した。バラシクロビルによるヘルペス再発抑制療法を開始したところ,多形紅斑も殿部の単純疱疹ともに再燃を認めなくなった。
  • 長岡 悠美, 夏秋 優, 山西 清文
    2010 年 9 巻 5 号 p. 462-464
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    64歳,女性。萎縮性膣炎のため産婦人科でホーリン®V膣用錠を挿入された。その直後から気分不良を生じ,約30分後に全身に熱感と痒みを伴う紅斑が出現すると共に呼吸困難と意識混濁を生じた。すぐに膣内を洗浄して,ステロイド剤の点滴療法を施行したところ,症状はすみやかに軽快した。原因検索のために施行したプリックテストでは,ホーリン®V膣用錠の成分(エストリオール,ステアリン酸マグネシウム,マクロゴール6000)のうちマクロゴール6000のみで陽性を示した。以上より,自験例をホーリン®V膣用錠に含まれるマクロゴール6000によるアナフィラキシーと診断した。
  • 上岡 なぎさ, 奥村 恵子, 杉山 美紀子, 宋 寅傑, 保坂 浩臣
    2010 年 9 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    76歳,女性。2009年8月に左乳頭を強打後に同部が腫大し,硬結と疼痛が出現した。9月に近医で施行されたマンモグラフィでは異常所見はなかった。近医で肥厚性瘢痕の治療を行ったが軽快せず,当科を紹介され受診した。初診時,左乳頭は暗褐色調に腫大し硬結を触れたが,びらんや分泌物は認めなかった。皮膚生検にて腺癌であり,乳房超音波で乳頭直下に 6×6×4mm 大の不整形低エコーの腫瘤を認めた。造影 CT にて同部位に濃染結節がみられたほかは,遠隔転移などは認められなかった。乳頭に限局した原発性乳癌と診断し,胸筋温存乳房切除術を施行した。全摘時の病理所見では浸潤性乳管癌で,乳頭腺管癌の所見であった。乳頭部原発の乳管癌は稀であり,本邦では現在までに19例が報告されているのみである。
  • 瀧 玲子, 松村 由美, 谷岡 未樹, 是枝 哲, 石川 隆之, 宮地 良樹
    2010 年 9 巻 5 号 p. 469-475
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1:60歳代,男性。初診の2年前に顔面および背部に多数の暗褐色斑が出現した。左鼠径部リンパ節の腫脹がある。皮膚およびリンパ節の生検標本において多クローン性の形質細胞の浸潤を認めた。IgG は 2,702mg/dl に上昇した。自覚症状や他臓器病変はなく経過を観察してきたが,初診の2年後にプレドニゾロン 15mg/日の投与を開始した。経過中,発熱や全身倦怠感を伴わなかった。経過とともに乳酸脱水素酵素 (LDH) の低下が進行し,最低値は 100IU/l であった。症例2:50歳代,男性。初診の4~5年前に腹部を中心に紅斑と褐色斑が出現した。皮疹は次第に増加し,躯幹のほぼ全体に米粒大から小豆大の褐色斑が散在するようになり,微熱および全身倦怠感を伴った。表在性リンパ節の腫脹がある。皮膚生検標本には真皮に形質細胞の浸潤を認めた。IgG は 5,100mg/dl に上昇した。胸部 CT では右肺野に淡いスリガラス陰影が散見され,リンパ球性間質性肺炎の像であった。プレドニゾロン 15mg/日の投与を開始したところ,微熱と倦怠感は消失したが,皮疹は改善しなかった。経過中の LDH の最低値は 102IU/l であった。LDH-免疫グロブリン複合体形成により LDH 活性が阻害されるとの過去の報告がある。過剰に産生された免疫グロブリンが LDH の低下につながったと推測され,LDH 値は全身性形質細胞増多症において病勢を反映するマーカーとなる可能性がある。
  • 佐々木 良輔, 清水 善徳, 山北 高志, 秋田 浩孝, 稲葉 弥寿子, 山崎 俊夫, 松永 佳世子
    2010 年 9 巻 5 号 p. 476-481
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル 認証あり
    BCG 接種後の丘疹状結核疹の3例を経験した。症例1は5ヶ月,女児。BCG を接種した5週間後より四肢に丘疹が出現した。症例2は6ヶ月,男児。BCG を接種した1ヶ月後から四肢に丘疹が出現した。症例3は5ヶ月,男児。BCG 接種した1ヶ月半後より全身に丘疹が出現した。病理組織学的に,3例とも真皮の血管周囲にリンパ球の浸潤と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,BCG 接種による丘疹状結核疹と診断した。3例とも無治療で3ヶ月以内に略治した。1歳未満の散在性の丘疹をみた際,丘疹状結核疹を疑い BCG 接種歴を聴取することが重要であると考えられた。
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