フィルムスタンプチェック・マンニット食塩寒天培地を用い, 16人の小児アトピー性皮膚炎患者と14人の健康小児の頬部よりブドウ球菌属を分離培養した。その結果, 小児アトピー性皮膚炎患者の16人中14人 (88%), 健康小児の14人中2人 (14%) より黄色ブドウ球菌が検出された。アトピー性皮膚炎の皮疹がより重症であるほど, 黄色ブドウ球菌の菌数もより高値を示した。表皮ブドウ球菌や他のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の菌数は, 健康小児において小児アトピー性皮膚炎患者より高値を示した。病原性菌種は, 小児アトピー性皮膚炎患者にてより一般的でかつ優勢性を示した。小児アトピー性皮膚炎の黄色ブドウ球菌コアグラーゼ型別では, type II, type III, type IV, type V, type VII, type VIIIがみられ, type IIIが4人と最多であった。今回, 対象症例数が少ないが, 皮疹の重症度とコアグラーゼ型別間における相関関係は特にみられなかった。コアグラーゼ型別における抗菌感受性の相違は無視できず, 又, 小児アトピー性皮膚炎から分離された黄色ブドウ球菌のコアグラーゼ型別の分布からは, 膿痂疹やフルンクルのような他の感染性皮膚疾患の主たる型別とはならない可能性が示唆された。