抄録
長瀞地域に産出する自然銅の分布・産状を明らかにするために,現地調査を行うとともに,既存の標本・学術論文・採鉱の記録を整理した.その結果,自然銅を含む銅鉱物は赤鉄鉱石英片岩中が著しく破砕された部分に,石英脈・方解石脈とともに混在していることが明らかになった.自然銅は銅鉱物の中心部に存在し,その周辺に赤銅鉱,最縁部に孔雀石もしくは珪孔雀石が存在することが多く,その産状から初生において自然銅であったと考えられる.また,長瀞地域では明治20年代~大正時代において銅鉱石の採掘が行われたが,この際に層状含銅硫化鉄鉱鉱床のみならず,自然銅を含む銅鉱物を採掘していたことが明らかになった.