抄録
我々が新規に開発した, タンパク質1分子を直接観て, 捕捉·操作し, その動きをナノメートル, ミリ秒の高分解能で計測することのできる走査プローブ顕微鏡を用いて, タンパク質分子モーターアクトミオシン1個が発生する変位を測定した. その結果, アクトミオシンは, これまで人工機械とのアナロジーで考えられてきた決定論的な運動メカニズムではなく, 外部のゆらぎを積極的に利用した確率的な運動メカニズムに基づいていることが明らかになった. これにより, 負荷など外部環境の変化に柔軟に適応し, 高いエネルギー効率で働くことのできる生体ナノマシンの分子メカニズムを理解する道を開いた.