バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
27 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
解説
  • 喜多村 和郎
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 60-66
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    我々が新規に開発した, タンパク質1分子を直接観て, 捕捉·操作し, その動きをナノメートル, ミリ秒の高分解能で計測することのできる走査プローブ顕微鏡を用いて, タンパク質分子モーターアクトミオシン1個が発生する変位を測定した. その結果, アクトミオシンは, これまで人工機械とのアナロジーで考えられてきた決定論的な運動メカニズムではなく, 外部のゆらぎを積極的に利用した確率的な運動メカニズムに基づいていることが明らかになった. これにより, 負荷など外部環境の変化に柔軟に適応し, 高いエネルギー効率で働くことのできる生体ナノマシンの分子メカニズムを理解する道を開いた.
  • 川上 泰雄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 67-71
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    姿勢の保持やロコモーションにおいて重要な役割を果たす人間の下肢筋群には羽状筋が多く, 大きな力を発揮すると同時に, 収縮中に長大な腱を伸長させる. このため, 関節の動きと筋線維動態は一致しない. 本稿では, 運動中の筋線維動態とその機能的意義について, 人間の骨格筋における生体計測の結果を基に解説した. 反動をつけてジャンプを行う場合, 筋線維は活動中に効率·発揮筋力の高い等尺性筋活動を維持し, 腱組織の伸長によって蓄積された弾性エネルギーを利用することによってパワーを増大させる. ランニングや歩行においても同様の筋-腱相互作用が生じ, このことによって高い運動効率が達成される. 主動筋の筋線維を効率よく, 効果的にはたらかせるようなタイミングのコントロールの善し悪しが運動パフォーマンスの巧拙や運動中の傷害の発生と関係していることが予想される.
  • 大久保 敦子, 宮下 崇, 弓削 類
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 72-75
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    物理的刺激に対する培養筋芽細胞の応答性について我々の行った研究内容を解説した. 筋芽細胞への物理的刺激は, 磁場による伸展刺激と電気刺激の二つの刺激方法を用いた. 伸展刺激では, 細胞にかかる張力が強いほど分化が促進され, 筋管細胞の発生率も高かった. また, 筋芽細胞から筋管細胞への分化マーカーであるmyogeninの発現も伸展刺激での分化促進を裏付けた. 電気刺激でも細胞伸展と同様に筋芽細胞の分化は促進した. さらに電気刺激では, 筋管細胞がより成熟し, 自動収縮能を持つ筋線維の出現を認めた. 物理的刺激を受容する細胞応答性のメカニズムの解明は, 細胞レベルにとどまらず生体レベルにも今後さらなる応用が期待できる.
  • 内山 孝憲
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 76-82
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    筋張力を直接制御するものは, 脊髄内のα運動神経である. そのα運動神経に対して脊髄内でのフィードバック回路を構成している神経細胞がレンショウ細胞である. レンショウ細胞を含む反回抑制系については, 実験上の困難さやα運動神経細胞との結合が幾何学的に複雑で大規模な構造であることが理由となり, あまり分かっていない. 一方, これまで, 個別にはα運動神経細胞およびレンショウ細胞の性質が調べられており, 近年, これらに基づいて計算機シミュレーションにより, 筋張力制御との関わりが明らかにされつつある. 本稿では, α運動神経細胞およびレンショウ細胞の生理学的性質について述べ, モデル化方法および筋張力制御との関連について, いくつか紹介する.
  • 鈴木 誠
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 83-86
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    筋肉の収縮機能をになうタンパク質であるアクチンとミオシンはこれまでさまざまな手法で研究され, 分子レベルで詳しい情報が得られている. 本研究では, 2つのタンパク分子間の相互作用に深く関与するミオシン側の水和状態について誘電分散解析を行い, ATP分解反応にともなうタンパク表面の水和量の変化および疎水性の変化を見出した. また分子レベルのエネルギー変換のメカニズムに踏み込むために, ミオシン頭部S1のループ2にアクチン遺伝子を組み込んで作成したキメラタンパクを用いて進めている取り組みについて紹介する.
研究
  • —運動学および動作筋電図学的解析から—
    関川 伸哉, 関 和則, 山本 澄子, 市江 雅芳
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年27 巻2 号 p. 87-94
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/27
    ジャーナル フリー
    本研究では, 装具機能と片麻痺歩行との関連性を明らかにすることを目的とし, 10名の片麻痺者を対象に裸足および装具機能の異なる2つのAFO(AFO-1, AFO-2)を用い身体運動の計測を行った. また, 身体運動の変化を引き起こしている生体内筋活動の変化を把握するために, 麻痺側下腿の動作筋電図学的解析を行った. AFO-1は, 足関節の内外反のみを制御し補助モーメントは発生しない. 一方, AFO-2は, 内外反の制御に加え背屈方向補助モーメントを発生する機構を有している. 実験の結果, 裸足, AFO-1, AFO-2の順番で歩行速度は, 立脚期, 遊脚期の双方で有意に高い値を示していた. また, 裸足, AFO-1, AFO-2の順番で麻痺側下腿筋活動は, 立脚期ではGL, 遊脚期ではTAに有意な高い値を示していた. したがって装具の背屈補助モーメントは, 片麻痺者の麻痺側下腿の筋活動および歩行に著明な変化をもたらすことが明らかとなった.
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