抄録
コンピュータシミュレーションは, 単に, 探求したいシステムの特性を調べたり, 理論と実験結果との関係を調べたりする段階を越えて, 設計論の開発や制御の中核的存在になろうとしている. 特に, ここ数年のコンピュータの高速化はスーパーコンピュータクラスの演算能力を身近なものとし, コンピュータシミュレーションは多くの研究者にとって強力な武器となっている. しかし, コンピュータの高性能化がもたらすシミュレーションの高度化は, シミュレーションに用いられるモデルを高次で複雑なものにしようとしている. モデルに含まれるパラメータ数が増加すれば, 現実に対応したシミュレーションは, むしろ困難な状況になってしまうだろう. モデリングに要求される対象システムの次数は, そのモデルをどのように用いるかに依存するが, 実空間を反映するパラメータを得ることができないモデルでは, 単に研究者の発想支援ツール程度に留まってしまう. 本稿では, 単なる発想支援ツールではなく, 実際に役立つシミュレーション技術として, 人間機械系における実空間とシミュレーション空間でのインタラクティブなシミュレーションの役割と有用性について述べる. 特に, ヒューマノイドロボットやロボットスーツ/パワードスーツにおけるモデリングとインタラクティブシミュレーション, さらに, 人工心臓分野におけるモデリングとインタラクティブ生体生理シミュレーションの役割と有用性について, 実例を交えて説明する.