バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
研究
聴覚マスキングによる時間知覚の妨害
楠本 裕亮中園 嘉巳野澤 昭雄井出 英人
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2005 年 29 巻 3 号 p. 146-151

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抄録

健常被験者6名は,あるインターバルを持って呈示される2度のブザー音を片側の耳から聞き,2度目のブザー音呈示後に同じインターバルで,右手あるいは左手の示指により1度だけボタンを押すように指示された.ボタンが押された時刻と2度目のブザー音呈示時刻を測定し,その時間間隔を被験者の予測時間として求めた.インターバルに対する予測時間の当てはまり尺度(決定係数)を用いて予測精度を評価した.結果,ブザー音が呈示される側(右耳・左耳)によって予測精度に違いは認められなかった.ただし,マスキング音を片側の聴覚に与えた場合,右手ボタン押し・左の聴覚へマスキング音を与えたときのみ,常に予測精度を有意に低下させた.このことは,マスキング音がインターバルの記憶にラテラリティを持って干渉をすることを意味する.すなわち,聴覚による時間間隔の記憶,つまり時間知覚に関するワーキングメモリ,の機能局在を示唆する.

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© 2005 バイオメカニズム学会
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