抄録
日本におけるオフィスの歴史は,戦後から始まったと考えてよい.そのオフィスに大きな変化が見られるようになってきたのは,オフィスオートメーション(OA)が始まった1980年頃からである.その中で,事務用椅子もOA化の影響を受けて,変化が始まった.その変化の中心は,座る人の姿勢変化への対応を向上させることである.具体的には,背もたれの傾斜機構から座と背もたれの連動傾斜機構へ,そして座や背もたれの素材による対応へと変化し,その対応度を向上させてきた.本稿では,仕事の場において最もよく使用する事務用椅子について,戦後から現在までの変遷を,人間工学的視点を中心に俯瞰し,解説していく.